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 〈武器購入、コロナ対策、働かない人への支出〉

 日本国憲法第25条は1項で、「すべての国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する」と定めています。他方、第27条1項には、「すべての国民は、勤労の権利を有し、義務を負う」と定めています。

 働かないため食えない人に、国は税金を使って、生活費を出さなければならないのでしょうか。これもまた、重大な憲法問題です。この問題も、本気で考えてみなければならない問題です。個人の尊厳という秤で計ってみましょう。

 その前に、現在差し迫っている問題について考えてみます。新型コロナウイルス対策費は、莫大なものとなりそうです。その上、感染を回避するため、「密集、密接、密閉」の三密は回避するなど、経済活動は自粛しなければならない部分も多くあり、仕事ができず、税収は激減しそうです。新型コロナウイルス問題が収束したとしても、今後同様の問題が発生しないとも限りません。

 このような問題に対し、国民はどうカネを出し合い、そのカネをどう使うか、という問題は、税金はどう出し合って、その税金をどう使うべきかという問題そのものです。

 地球温暖化問題、核のゴミ処理問題、食糧問題など、地球規模での事業資金の支出は、人類共通の問題であり、この先さらに拡大するものと思われます。

 税金と国の借金の使い方には、ますます深い関心が必要です。ここもまた個人の尊厳、つまり一人一人の生命と幸福という秤を使って計ってみなければならない問題です。国民は賢くならなければならいのです。

 憲法第25条は、その2項で、「国は、すべての生活部面について、社会福祉、社会保障及び公衆衛生の向上及び推進に努めなければならない」と規定しています。この規定からだけでも、税金から新型コロナウイルス対策費を出すことは、憲法上当然ということになります。

 他方、前記の通り、憲法第9条の規定から、税金から武器購入資金を出すことは、憲法の条文上、明らかに違憲です。ここまでの問題は、憲法の具体的条文を読めば、誰でも比較的容易に答えが出せそうな気がしますが、いかがでしょうか。憲法の条文を読むだけで簡単に結論が出てきます。

 難しい判断となるのは、働かない人に対する生活資金を税金から出すことが、日本国憲法上許されるかどうかです。特に、「働けるのに働かない人」に対してと言い切ると問題がはっきりしてきます。

 この問題は、武器購入資金に税金を使ってよいか、新型コロナウイルス対策費に税金を使ってよいか、という問題と違って、一見明らかという問題ではありません。微妙な問題です。ほんのわずかの差で、どちらとも言えそうであり、どちらとも言えないところがあり、難しいところがあります。ですが、ここでも個人の尊厳、つまり一人一人の生命と幸福が究極の価値であるという秤で計ることになります。


 〈憲法解釈によって違う結論が出てくる可能性〉

 「日本国憲法において、税金はどう使うべきか」という問いに対する答えは、前述のように、抽象的には、「国民の生命と幸福を守るために使うべきである」ということになりますが、具体的ケースに即して考えると、憲法の条文の解釈の違いによって、違った結論が出てきそうです。

 その辺のところが、憲法の解釈問題であり、日本国憲法第3章の「国民の権利及び義務」の規定を理解するうえで、重要なポイントとなりそうです。ここを深めてみることは、国の経済、即ち経国済民、国を納め、国民を治め、国民を救うという視点から根本的な問題を深めることになりそうです。

 ここまで述べてきたところで。答えは出ているように思いますが、もう少し次の問題を掘り下げてみます。

 ①「武器購入資金に税金を使っていか」

 ②「新型コロナウイルス対策費に税金を使っていいのか」

 ③「働かない人の生活費に税金を使っていのか」

 税金の使い方の問題は、これに限ったものではありませんが、ここを深めることによって「田舎弁護士の大衆法律学」の「国民の権利及び義務」は、より深まるのではないかと思うのです。どうなるか、まずやってみましょう。皆様もご自分で考えてみて下さい。憲法に関心を持ち、憲法を身近なものとするには、良い問題です。

 ちなみに、この問題を普段親しくさせてもらっている仲間に出したところ、①は「税金を使ってはならない」、②は「税金を使ってもよい」、③は「税金を使ってはならない」か「難しくて答えられない」という答えが寄せられました。

 ①、②については同感です。③については法律論と感情論が絡み合い、判断が難しくなります。「働けるのに働く気のない人まで、税金で食わせる必要はない」という気持ちは分かりますが、「飢え死にする人を見ない振りはできない」という気もします。

 理念と現実の溝をどう埋めるかという問題は、突き詰めていくと難しい局面にぶち当たりそうです。憲法の解釈は、どのようにしたらよいのかを堀り下げるため、①、②、③の問題をもう少し掘り下げてみます。憲法の条文を暗記したり、憲法の教科書を読み込んだりするだけに止めないで、こういう問題を自分の頭と心で解決してみることは、楽しく生きた憲法の勉強方法のような気がします。

 (拙著「新・憲法の心 第28巻 国民の権利及び義務〈その3〉」から一部抜粋 )


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