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 〈憲法の伝道師〉

 キリスト教で人々に教えを説き広め、入信を勧めることを「伝道」と言い、伝道する人を「伝道師」と呼ぶ。弁護士は、法律を教え説き広め、法律を守るように勧める伝道師とならなければならない。弁護士は、特に「憲法の伝道師」としての使命がある、と確信する。地方弁護士は、地方住民に憲法を分かり易く説き広める役割がある。

 そういう思いで、これまで「大衆法律学」と称して、分かり易い法律の本を多く発行した。中でも憲法の本は、30冊を超えて発行してきた。

 日本国憲法は、究極の価値を人命と人権にあると考えているから、憲法の伝道師としては、人命と人権を守るように国家機関、地方機関、国民、地方住民など、あらゆる人に対し、日本国憲法の心を説き広めなければならない。これは、弁護士の社会的使命である。

 地方弁護士も弁護士である以上、この社会的使命があると確信する。地方弁護士が、憲法の伝道師の役割を果たすための方法はいくつかある。その一つとして、地方住民に対し、憲法の大事な部分を分かり易く講演したり、本を書いたりすることをしてきたつもりである。

 日本国憲法は、人命と人権という、この世において最も大事な究極の価値を守るためには、二度と戦争はしてはならない、させてはならないという深い反省の上に生み出された。

 日本国憲法の心を、考えを説く広め、それを守るように伝道するために、日本国憲法はどのような心で、考え方によって生み出されたのかを国民に、地方住民に分かり易く説き広めることは、弁護士の社会的使命であると確信している。憲法の伝道師になりたい。

 人命と人権を究極の価値と考え、そのために戦争放棄を謳った日本国憲法が、どのようにして生まれたかを説き広めなければならない。

 そのためには、まず明治憲法が現行憲法に変わった経緯を知ることが大事である。明治憲法から日本国憲法に変わった経緯を、国民や地方住民に分かり易く説明するには、①憲法改正の動機、➁憲法の前文、➂憲法9条の心、を分かり易く説き広めなければならない。

 以上の3点を考えれば、戦争に対する反省により、日本国憲法は生まれたものであることは、すぐ分かる。戦争によって人命が奪われ、人権が侵害されたことを反省し、二度と戦争によって人命と人権が奪われ、侵害されることのないようにしようとして、日本国民が生み出したのが、戦争放棄の哲学であり、戦争放棄を核とする日本国憲法を説き広めることは、弁護士の社会的使命であると確信する。

 地方弁護士は地方住民に対し、身近に接する周囲の人に対し、直にこのことを語りかけ、説き広める社会的使命があると考え、それを実行してきたつもりである。


 〈憲法の正しい解釈を説き知らせる必要性〉

 日本国憲法の伝道師の役割を担当するのは、法律の勉強をし、司法試験に合格し、司法研修所を卒業し、法曹資格を与えられた弁護士も、その有力な一員であることは疑いの余地はない。特に地方弁護士は、法学部のある大学も少ない地方においては、法律の専門家として憲法を地方住民に伝道する役割を果たさなければならない。

 一般教養レベルの知識としての憲法の勉強は、地方の高校や大学でもするが、それだけでは現実に問題になっている憲法問題を議論するには不足である。成人年齢が下がり、18歳から政治に参加する時代となった現在は、地方住民に学校教育レベルを超えるレベルの深さで、憲法の心と、憲法の正しい解釈を説き知らせる必要性は、より高くなった。

 第一次安倍政権誕生後、憲法改定問題、特に憲法9条改定問題が政治の場で論じられるようになり、国民の間でも議論されるようになっている。プーチンのロシア軍がウクライナに侵攻したり、中国の台湾問題や、北朝鮮の動きなどにより、国防の必要性が議論され、日本国民の防衛意識が高まり、これを利用して憲法9条の改定を狙う政治家もいる今こそ、憲法9条の正しい知識が必要となっている。

 憲法改定、9条改定問題を議論するには、国民も政治家も、憲法の勉強が不足している。このままでの議論では、日本国憲法の存在は危ない。憲法9条は改定されかねない。改定の前に、解釈を誤った方向に誘導され、9条の心と真意は、抜け殻とされかねない。今日の日本の状況は、既に危ない状況となっている。

 (拙著 「地方弁護士の役割と在り方」『第2巻 地方弁護士の社会的使命――人命と人権を擁護する――』から一部抜粋)


 「地方弁護士の役割と在り方」『第1巻 地方弁護士の商売――必要悪から必要不可欠な存在へ――』『第2巻 地方弁護士の社会的使命――人命と人権を擁護する――』『第3巻 地方弁護士の心の持ち方――知恵と統合を』(いずれも本体1500円+税)、「福島原発事故と老人の死――損害賠償請求事件記録」(本体1000円+税)、都会の弁護士と田舎弁護士~破天荒弁護士といなべん」(本体2000円+税)、 「田舎弁護士の大衆法律学 新・憲法のこころ第30巻『戦争の放棄(その26) 安全保障問題」(本体500円+税)、「いなべんの哲学」第1~16巻(本体1000円+税、13巻のみ本体500円+税)も発売中!
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