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 〈日本国憲法において税金の徴収方法はどうあるべきか〉

 税金の種類は、たくさんあり、いろいろな分類や区別の方法があります。まず、国税と地方税という区別があります。国税は国民が国に納める税金で、所得税、法人税、相続税、贈与税、消費税、酒税、たばこ税などがあります。地方税は、地方公共団体の経費として、その地域の住民から集める税金です。都道府県民税、市町村民税、事業税、不動産取得税、固定資産税、自動車税などがあります。

 国税にも、地方税にも、直接税と間接税があります。直接税は税金の負担者が直接支払う税金です。所得税、法人税、相続税、贈与税、都道府県民税、市町村民税、固定資産税などです。間接税は、物を買ったり使ったりするときに、販売者などを通して、国や地方に納める税金で、消費税や酒税などがこれです。買い物代金の中に、上乗せになっている税金です

 令和元(2019)年の総税収61.6兆円のうち、所得税19.9兆円と法人税12.9兆円と消費税19.4兆円の三つで、52.2兆円となり、総税収の約85%となっているようです。この三つに関して、税金の徴収方法について、私見を述べてみます。的外れな意見となっていそうな気もしますが、普段思っていることを素直に述べます。憲法問題というよりは、税金に関する個人的意見です。

 まず、「所得税」と「法人税」という呼び方は、「個人所得税」と「法人所得税」にすべきです。現在は「所得税法」と「法人税法」と呼んでいますが、これを「個人所得税法」と「法人所得税法」と、その法の名前を聞いただけで、はっきりその異同が分かるように呼び方を変えるべきです。

 所得税は、「1年間の個人の所得に課せられる、国の直接税」(角川必携国語辞典)、法人税は、「法人の所得に課せられる国税」(広辞苑)です。どちらも所得、つまり一定期間の収入から経費を差し引いた所得(利益)に課せられる税金である点では同じです。

 違いは、その税金を納める主体が個人か法人かという点です。ですから、その異同を一見して分かるように「個人所得税」「法人所得税」と呼んだ方がいいのです。「名は体を表す」です。名前には、その中身をはっきりと表すことがいいのです。細かいことですが、まずこのようなことも、税金を納める国民がよく理解できるように、国家機関は優しい心遣いを尽くすべきだと思います。

 そもそも法律は、国民が生活していくうえでのルールです。国民に分かりやすいものでなければならないのです。このような分かりやすい話から、税金の徴収方法の問題点についての話を、スタートさせてみます。


 〈所得税から収入税に〉

 税金はこれまで述べてきたように、国民が自ら納税の義務を憲法に宣言した国に納める会費なのですから、その徴収方法は国民に分かりやすいものでなければならないものです。

 まず気になるのは、個人所得税と法人所得税についてですが、どちらも所得税という考え方は止めるべきだと考えます。どちらも収入税に変えるべきだと思うのです。つまり収入から経費を差し引いた所得に税金を掛けるやり方を止めて、単純に収入に税金を掛ける収入税にすべきです。「個人収入税」と「法人収入税」にすべきということになります。

 その理由は、税金の役割の第一は、公共サービスの資金の調達にありますが、公共サービスの利用の度合いは、一般的には、所得の多い人というより、収入の多い人ほど高いと言えそうだからです。

 年収1000億円ある法人が、経費がそれ以上に掛ったからといって、所得がでないから法人税を払わなくともよいとするのは、なんかすっきりしません。これだけ収入があれば、所得はなくても公共サービスはそれなりに利用しているはずですから、それに見合った税金を払うのが公平です。

 年収1000億円を稼ぐ企業は、それだけ多くの従業員を使っていることが多いと思われます。その人たちが利用する公共サービスも当然多くなります。しかし、経費が1000億円以上かかっているから所得がないとして、税金を払わなくてよいとするのは、納得がいきません。

 従業員を使わないで事業主1人で働き、1億円の収入があったが、経費がかからないから、1億円近い所得があるとして、多額の所得税を払わなければならないケースとの間には、あまりに差があり、不公平な気がするのです。

 収入に税金を掛けることによって、公共サービスを利用する度合いに比例する税金の徴収ができるのです。この方が公平となります。

 所得税を止め、収入税にすべきだと主張する、もう一つの理由は、税金の納め方、徴収方法の簡素化にあります。収入から経費を引いて出す所得を計算しなければならない方法は止めるべきです。この計算は複雑すぎます。経費となるかどうかについての考え方の違いも出ます。

 収入税ですと、経費を記録する必要もなくなり、減価償却などという面倒な計算も不要となります。それですと、誰でも自分で税金申告ができることになります。税理士に頼まなければ、申告ができないということもなくなります。税金の申告が簡素化されるだけでなく、税務調査も簡単になります。

 税金を払う国民側も、税金を徴収する国側も、大幅に税金申告手続きや税務調査が楽になります。国民も国家機関も楽になるのです。所得税は止め、収入税にすべきです。所得税などという申告が面倒で、税務調査が面倒な方法は止めるべきということです。

 事業をする人は、その事業のため精一杯働いて、税申告の準備のため時間や手間暇を掛けるのは大変な負担です。この負担を軽減することは、大切なことなのです。そもそも誰も税金を払うために働いているのではないのです。税金申告の手間暇は、本来の仕事にとっては、余計な負担です。できるだけ軽減しなければなりません。

 (拙著「新・憲法の心 第28巻 国民の権利及び義務〈その3〉」から一部抜粋 )


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