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 〈三谷名誉教授と先崎教授の見解〉

 

 森友学園問題に端を発して、教育勅語が大きく取り上げられるようになった。森友学園が運営する塚本幼稚園が園児に教育勅語を暗唱させていたことが明るみに出、さらに安倍内閣が教育勅語を憲法や教育基本法に反しない形で教材として使うことを認める答弁書を閣議決定するまでに発展したことなどが関係している。

 
 教育勅語については1948年に日本国憲法の精神に反するものとして国会において排除、失効が確認されたけれども、その後も、その中の徳目を取り上げて、教育勅語を教育の場で使用する試みが唱えられてきた。

 
 この教育勅語の問題について今年4月19日付朝日新聞は耕論で、東京大学名誉教授三谷太一郎氏と日本大学教授先崎彰容氏の見解を掲載している。

 
 ここで私が述べたいことは、その各人の意見の内容の是非ではなく、その論じられていることについての全くの感想である。

 
 三谷氏は1936年生まれ、先崎氏は1975年生まれ。編集方針として、その耕論の対象者を初めから戦前と戦後生まれの研究者ということとしたからであろうが、論じられている内容には、その年代の差を感じさせられた。

 
 三谷氏は、「教育勅語の本質は、天皇が国民に対して守るべき道徳上の命令を下したところにあります。そうした勅語のあり方全体が、日本国憲法第19条の『思想及び良心の自由』に反します。」と述べ、「安倍内閣はそれを全く念頭に置かず、教材として使えるという閣議決定をしました。」とその安倍内閣の決定を批判する。

 
 先崎氏は、戦前の教育勅語をめぐる経緯の現代に与える示唆として、「どちらの時代も、確かな価値観や倫理規範がなくなった『底が抜けた時代』ということです。」と述べ、教育勅語をめぐる騒ぎは「それ自体は大したことではない」けれども、「現代の日本社会が抱える、より本質的かつ大きな問題に突き当る」「かつてのように国民が『画一化』されてしまうかも知れない危険性に気づくためにこそ、今回の教育勅語騒動は掘り下げて考えるべき」と述べる。

 
 どちらもこの教育勅語問題には危険性を感じるけれども、三谷氏は教育勅語の内容を含めて明確に現政権の対応や今我が国が置かれている状況に問題があることを指摘しているのに対し、先崎氏は教育勅語が発表された明治の時代と現代とに共通する確かな価値観や倫理規範がなくなった「底が抜けた時代」を迎えていることの危険性を指摘し、教育勅語の内容の危険性や現政権の対応についての明確な問題意識を提示してはいない。恐らく先崎氏の、国民が画一化されてしまうという表現には、現政権に抱く不安をも滲ませているのではないかとは推察される。

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