司法ウオッチ<開かれた司法と市民のための言論サイト>

 

 〈国民を欺いた最高裁〉
 

 私が大法廷判決を批判したのち、その私の意見に反論した柳瀬昇教授の論説は、私の到底納得し得ないものであるが(司法ウォッチ2017年6月1日~)、その柳瀬教授でさえ、大法廷事件の弁護人の上告趣意が憲法80条と76条2項違反の2点「だけ」であったことは認めている。

 

 そうであれば、大法廷判決が上告趣意として記述している「所論は多岐にわたり裁判員法が憲法に違反する旨主張する。」との判示が偽りの記述であることは明らかである。しかし、同教授はそのことについては黙して語らない。まぎれもなく最高裁は判決の判示によって国民を欺いたのである。しかも、裁判員制度推進のための政治的判示までしたのである。

 
 

 〈上げ続けるべき制度批判の声〉
 

 これまで私は、裁判員制度の違憲性など、その抱える問題について反復して意見を述べてきた。この大法廷判決の最大の問題は、国家司法権の最高の地位に立つ最高裁が、司法権を行使するものとして絶対に侵してはならない司法権の独立、立法・行政からの独立の理念に背いて、これに迎合したということである。また、この大法廷判決に迎合して、前記福島地裁判決は、国民の精神を蝕む裁判制度を擁護し、国民の基本的人権を公共の福祉の名のもとに侵害したのである。
 

 森友・加計問題等も重要である。しかし、この司法権の独立が風前の灯であることは本当に恐ろしい。
 

 私の地元の河北新報は、今年の2月8日の朝刊で「裁判員相次ぎ辞任」「公判期日異例の取り消し」の見出しで、強制性交致傷罪に問われた男の裁判員裁判で、二人の女性裁判員と一人の女性補充裁判員が相次ぎ辞任の申し出をしたことにより、これを解任し、論告求刑公判の期日を取り消すに至ったことを報じた。国民が裁判員制度について何らかの批判的意見を述べ、或いは行動に出ることによって制度は必ず自壊していく。司法を健全な姿に立ち直させるのは、国家権力の基盤である主権者国民以外にはない。

 

 先ごろ、裁判員候補者の不出頭者、辞退者の増加について最高裁がその原因の調査を第三者に依頼したとの報道があった。国民がはっきりと制度についての意思表示をし、それを態度に示すことなどにより国民の一人ひとりが、また権力とは無縁な学者、日弁連などが、声高でなくてもよいから、ともかく制度批判の声を上げ続けることが重要なことだと思っている。



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