司法ウオッチ<開かれた司法と市民のための言論サイト>




 〈先見の明があった9条〉

 昭和15(1940)年に開催予定の東京オリンピックは、第二次世界大戦が勃発し、中止となりました。これは、人類自らが、その原因を作りました。令和2(2020)年の東京オリンピックは、新型コロナウイルスが原因となって延期となりましたが、これは人類が原因を作ったものではありません。

 しかし、オリンピックにクレーム(文句)が付いたということでは同じです。東京オリンピックは、二度クレームがついたことになります。他国開催のオリンピックではないことであり、不思議な因縁を感じます。

 今後の新型コロナウイルス感染拡大の状況によっては、1年延期後にも、東京オリンピックが開催できるかどうかは不確かです。現在の世界の感染拡大状況からは、不安の方が大きい。いまだにアメリカでは感染拡大が止まらず、日本だって不安は払拭されていません。

 さらに、特にアフリカや中南米などの発展途上国や政情不安な国、難民キャンプなどで感染が拡大したら、オリンピックどころではなくなりそうです。人類一人一人が、どうしたら生き残れるかというレベルの問題となり、平和の祭典どころではありません。

 「人類対人類の闘い」と「人類と異人類の闘い」ということの違いに気付いている日本国民は、どれほどいるのでしょうか。同じ闘いと言っても、戦争と新型コロナウイルスとの闘いは違います。しかし、相手は違っても、人類が闘うという意味では、戦争に近いともいえます。

 人類と人類の闘いは、人類が少欲知足と他利欲という欲望のコントロールというか、心の持ち方と、国という枠を取り除き、世界連邦という仕組みを創ればなくすことができます。しかし、異人類との闘いは、人類同士の闘いとは違います。

 新型コロナウイルスという異人類との闘いは、まず、人類対人類の闘いを完全になくし、人類が一致団結して、異人類と闘うことによって、異人類を撃退することになります。異人類との闘いは、人類が一致団結しなければならないもので、まず、人類同士の戦争などしていられない。人類が異人類と闘うためには、人類同士の戦争と、人類同士が闘うための道具である戦力を放棄しなければならないのです。

 日本国憲法は、異人類との闘いまで予測したかどうか分かりませんが、戦争の放棄と戦力の不保持を宣言しました。新型コロナウイルスの感染拡大を目の当たりにし、9条は先見の明があると思わざるを得ません。


 〈天命を受けている日本人〉

 オリンピックは、「平和の祭典」と言われていますが、文字通り、平和でなければできません。平和とは、「戦争や社会的混乱などなく、社会の秩序がなごやかでおだやかに保たれていること」(角川必携国語辞典)です。東京オリンピックが、一度ならず二度までも、クレームがついたのは、こんな時に平和の祭典などに浮かれていいのか、ということを問われたということです。

 それに加えて、昭和20(1945)年の広島・長崎の原爆で、世界中で日本だけが核兵器の被爆国となったことを合わせ考えると、日本は地球規模で平和を根本から考えなければならない大きな節目に三度も遭遇したことになるのです。

 こんなことを言うと、「気が変なのではないか」などと言われそうですが、私にはこのような日本の、これまでの巡り合わせを考えると、どうしてかは分かりませんが、「日本人よ、よく考えてみよ」と、天は日本人に命じていると思われてなりません。

 憲法9条を世界に広めるように、天は日本人に命じているような気がしてならないのです。天が命じようが命じまいと、9条を世界憲法にすることは、日本人の使命だと確信します。そういう縁というか巡り合わせとなっているように思えます。そういう縁を天命と言えば、言えそうです。

 そのような立場にある日本人の多くは、そんなことには全く気付かずに、パソコンやスマホなどの、目の前にあることだけに夢中とり、見えないものを、見たり考えたりということには疎かになっています。

 何を血迷ったか、アメリカの後押しがあれば、権力を握れるという計算があるのか、安倍前首相はアメリカににじり寄り、アメリカの意を受け、憲法9条を改定し、日本をアメリカと一緒に戦争のできる国にしようとしました。トランプ大統領とべったりしてきましたが、新型コロナウイルスは、そのような動きに対しても、警鐘を鳴らしている気がします。

 人類規模で、地球規模で、新型コロナウイルス問題に関し、考え、行動しなければならない時です。天命を受けている日本人は、まず考えなければなりません。その天命を受けているのは、あなたであり、私です。誰もが考えなくてはならないのです。

 新型コロナウイルス問題が発生し、日本人として考えなければならないことは沢山ありますが、新型コロナウイルスと平和、そして新型コロナウイルスと日本国憲法9条の関係が、まず頭と心に浮かびました。二度にわたる東京オリンピックのクレームと、広島、長崎の被爆体験を持つ日本人は、新型コロナウイルスの世界中での感染拡大を前にして、平和と9条について何を置いても、まず考えなければなりません。

 日本人には、日本国憲法9条の「戦争の放棄」と「戦力の不保持」という、人類史上、画期的で最高点に到達している哲学を世界に広める義務があります。日本人の一人である私にも、その責任はあります。おこがましい限りですが、日本国憲法9条の死守と普及のためにやれることは、何でもやるつもりで、こんな駄文を書いています。

 誇大妄想で大げさに考えているようでもありますが、日本人は天命を受け、憲法9条に「戦争の放棄」と「戦力の不保持」を世界に先駆けて謳ったと固く信じているのです。

 (拙著「新・憲法の心 第27巻 戦争の放棄〈その25〉」から一部抜粋)


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