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 「排除」という政治姿勢が、今回の衆院選挙では注目されることになった。発言の主である、「希望の党」の小池百合子氏が、今回の選挙で巻き起こすと想定されていた風が止まってしまったことが、この政治姿勢に対する国民の反応とつなげて、度々、メディアにも取り上げられている。

 

 小池氏がこの言葉と方法を選択した動機は、必ずしも分かりにくいとはいえない。彼女は、民進党から政策の合意を度外視して、丸ごと人材を受け入れ、またぞろ「野合」ととられることも、それでは民進と変わらない、という批判が出ることも、またそうした党内状況も避けたかったのだろう。

 

 ただ、彼女の根本的な政治信念としてできるかできないかを脇において、彼女がもし、本気でこの選挙に勝てる態勢を作ろうとするならば、「排除」を選択せず、安倍自民党との違いを鮮明にできる、次のような言葉を彼女が口にすることもできたように思える。

 

 「『野合』というが、かつての自民は、保守からリベラルまで幅広い人間を擁して、内部的な議論ができた。それが失われたのが、『安倍一強』の自民の姿ではないか」

 

 どこまでこの切り口がかつての自民党の姿を語り尽くしているかはともかく、「寛容な保守」を口にした彼女の立場に立てば、この選択をその言葉につなげ、「野合」批判を交わして、国民を説得することもできた。少なくとも今回の結果からみれば、風を止めた彼女の「排除」に、国民は安倍政権の姿勢に通じるものを見た、という分析もされているのだから、少なくと失速を回避できた可能性はあった。

 

 いうまでもないかもしれないが、彼女がこの時、心にもないことを口にしても、とにかく勝てる道を選択すればよかったなどということをここで言いたいわけではない。むしろ国民のなかにある「排除」に危機感を覚え、包摂と多様性の方向をむしろ期待した民意を全く拾おうともせず、この反応と結果を予想もしなかった、彼女の資質を判断すればいいと思う。

 

 しかし、この一事こそが、実は政党ドタバタ劇の末に、結局の自民大勝と安倍政権継続をもたらした、今回の選挙でわれわれ押さえておかなければならない点に思えるのだ。小選挙区、二大政党制、「決められる政治」。こうした言葉が当たり前に並べられ、数の塊を作ることが目的化した日本の政治状況で、一体、この国にどういう民主主義を求めるのかという根本的な課題を私たち自身に提示しているからである。

 

 民主主義が多数決による選択を基本とするものであったとしても、それが少数意見、反対意見の切り捨てを意味するのであれば、それは多様性に背を向けた、民主主義の努力回避でしかない。いかに少数、反対意見を汲み上げるか、配意できるかで、その国の民主主義の真価が試される。3対7ならば3割、4対6ならば4割の意見が反映せず、常に我慢しなければならない社会が、あるべき民主主義ではないはずなのである。

 

 「決められない政治」というが、なぜ「決められない」かといえば、それだけ多様な意見が存在するからであり、「決められない」ことに実は意味があり、慎重に議論しなければならないテーマであることを証明しているのである。つまりは、「決められない」ということ自体が、民意の反映であることも注目すべきなのである。

 

 「決める」には努力や労力がいる。でも、「決められる」ことが目的化すれば、すぐさまその努力、労力は回避されてしまう。むしろ、努力を回避したいがために繰り出される結果となっているのが、「決められる政治」指向の現実であり、前記した3つのキーワードに通底する、政治権力者の本音なのである。「排除」に反応した私たちは、そのことに気付き、今こそ胆に銘じるべきなのだ。

 

 今回の選挙後も、あるテレビ番組で、躍進した立憲民主党の政治家に対し、あなた方は票を取ったといっても、与党には遠く及んでいないとして、あたかも少数派の分を弁えた姿勢をとるべきではないか、というニュアンスの発言をしたメディアの解説委員がいた。出席していた立憲民主党の政治家は首を傾げていたが、要は「少数派」としての政治的妥協の方を彼らに求めているようにみえた。

 

 そもそも今回の獲得議席数だけて、彼らを「少数派」扱いすること自体間違っているが、まさに「決められる」ことだけから逆算する方向が、正しいことのように流すメディア論調の典型といわなければならない。こうしたものに惑わされず、多様性を内包し、意見を汲みあげる民主主義から逆算した形に私たちはこだわりつづけるべきである。



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