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 〈国や権力者に盲従してはならない弁護士〉

  弁護士は、国の正義を吟味し、国の言う正義が国民の命と人権を国家機関などからの侵害から守ることになるか、それとは反対に国民の人命と人権を侵害することになるかを念入りに調査し、国に対し、国民に対し正しい意見を言うことが社会的使命である。

 弁護士は、国の言う正義が人命と人権を侵害する結果となる場合には、国民の先頭に立って反対しなければならない。それこそが弁護士の社会的使命である。それは地方弁護士にとっても根本的な社会的使命である。国家機関が正義と主張しても、それに盲従してはならない。弁護士は、国家機関の手先などになってはならない。

 戦前の天皇制国家においては、天皇を究極の価値とする正義に国民が盲従し、戦争に突入して行った。このようなことは二度としたくはないし、させたくない。戦争は国家機関がなす最も重い大罪である。人命と人権を侵害する最低最悪の犯罪である。これを阻止することが、弁護士の最高最大の社会的使命である。

 「国のために死ぬのが国民の義務である」とか「特攻隊に志願するのが国民の忠義である」というような国家の言う正義の犠牲者など絶対に出さないようにするのが弁護士の任務である。地方住民が専制国家、軍国国家などを容認するような世間とならないようにすることが地方弁護士の役割である。

 天皇のために死ぬのが美徳などという考え方を国民に植え付けられることのないようにするのが、弁護士の社会的使命である。普段から地方住民に対し、人命と人権が日本国憲法の究極の価値であると知らせなければならない。これに反するような国家機関や、政治家の動きに対しては、これを阻止するように国民に知らせなければならない。

 国民の人命と人権を犠牲にするような国家機関の動きがあったら、まず弁護士が絶対反対の狼煙を上げなければならない。そのような芽が出ていないかを監視し、その目を見付けたら早くに摘み取るのが、弁護士の社会的使命である。弁護士法第1条は、「弁護士は(国家機関等の侵害から)人命と基本的人権を擁護することを使命とする」と規定していると解釈しなければならない。

 プーチンのような独裁者とも思えるものが言う正義論、歴史観などの持論に、言われるままに従う国民にさせたくない。そうさせないため、そのような芽を早く摘み取るように国民を指導するのが、弁護士の社会的使命だ。発信は遅くなったら国家権力の弾圧が強くなり、発信したくとも手が出せない状態となってしまう。

 弁護士は、国や権力者の言う正義に盲従したら最悪である。弁護士の社会的使命に真っ向から反することになる。弁護士は憲法の番犬にならなければならないのであり、国家権力者の犬となってはならない。国家権力に吠えたり、噛み付いたりすることはあっても、国家権力の飼い犬や手先となってはならない。

 国、つまり時の権力者の言う正義に対し、問題があれば真っ先に異議を唱えなければならないのが弁護士の使命である。国の言う正義に無批判に従ったり、協力することは弁護士のするべきことではない。そんなことをしたら、弁護士の社会的使命に反する。弁護士は、国民主権国家の中で、国家機関がすることに対し、「人命と人権を侵害することにならないか」という疑いの目で監視しなければならない立場にある。怪しい動きに対しては、番犬として吠えなければならない。

 弁護士は、国家権力の言う正義を鵜呑みにするようなことをしてはならない。そんなことをしては、弁護士として、その社会的使命に反することになると自覚しなければならない。そんなことをしたら弁護士は、必要悪という存在に止まり、必要不可欠な存在とはなり得ない。


 〈自分が雨垂れの一滴となる自覚〉

 弁護士は、国家機関と癒着してはならない。弁護士は、国家機関から認めてもらい、国から表彰されたいなどと考えてはならない。そうなっては地方弁護士の役割は果たせない。

 弁護士は、国の言う正義を実践し、実現させることは、その任務ではない。弁護士は、国家機関と結び付くべきではない。癒着など許されない。国が言う正義を吟味し、その間違いを指摘し是正させることが任務である。

 弁護士は、国と対峙しなければならない。対峙とは、対立する二人の人や二つの勢力が睨み合ったまま動かないでいることだが、国家機関と弁護士はそういう関係にある。国家機関と協力しなければならないこともあろうが、基本的には、弁護士は権力者とは対峙しなければならない。

 弁護士は、この姿勢を崩してはならない。主権者である国民に対して、国家機関がやることに間違いがあれば、その間違いに気付いてもらうように発信しなければならない。弁護士は、国家機関の間違いを指摘し、これを潰さなければならない。弁護士は、国家機関にとっては天敵、つまり自然界でその動物を好んで食べる動物のような存在とならなければならない。

 国家機関の間違いを指摘し、それを世の中に発信するには、多くの力は要らない。一人でもできる。その方法はいまやいろいろある。現代社会においては、インターネットなどで一瞬にして全国へ発信することもできる便利な手段はいくらでもある。国家機関などという大きな組織に対しても、この方法を使い、自分ができることからやることが大事である。

 まず、自分が雨垂れの一滴となることが大事である。その一滴の雨垂れを広く知らせることは容易にできる。その一滴は必ず仲間に伝わり、他の一滴を導き出す。地方弁護士は、まず自分が、雨垂れ石を穿つ一滴とならなければならないとの自覚を持つべきである。

 (拙著「地方弁護士の役割と在り方」『第2巻 地方弁護士の社会的使命――人命と人権を擁護する――』から一部抜粋)


 「地方弁護士の役割と在り方」『第1巻 地方弁護士の商売――必要悪から必要不可欠な存在へ――』『第2巻 地方弁護士の社会的使命――人命と人権を擁護する――』『第3巻 地方弁護士の心の持ち方――知恵と統合を』(いずれも本体1500円+税)、「福島原発事故と老人の死――損害賠償請求事件記録」(本体1000円+税)、都会の弁護士と田舎弁護士~破天荒弁護士といなべん」(本体2000円+税)、 「田舎弁護士の大衆法律学 新・憲法のこころ第30巻『戦争の放棄(その26) 安全保障問題」(本体500円+税)、「いなべんの哲学」第1~16巻(本体1000円+税、13巻のみ本体500円+税)も発売中!
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