司法ウオッチ<開かれた司法と市民のための言論サイト>




 〈究極の価値から筋道を通す〉

 憲法の究極の価値は、一人の人間の命が、基本的人権が、最も尊くおごそかであり、侵し難いものである、ということにあります。これを「個人の尊厳」と呼んでいます。一人の人間が最も尊く、おごそかであり、侵し難いものである、という究極の価値まで掘り下げて見ないと、憲法に隠れている大事な部分は、見つけ出せないのです。個人の尊厳というピラミッドの頂点から、国民の権利及び義務と憲法改正の関係も論じなければならないのです。

 国民主権だから、国民の多数決で、どのようにでも憲法を改正できると考えるのは、あまりに短絡的な考え方で、理論的とは言えません。このような考え方は、目に見えている部分だけの原因と結果とを自分の思い込みだけで結び付けてしまっています。目に見えない部分も見て、考えの筋道を立てなければならないと確信します。考えの筋道を立てるということは、究極の価値まで掘り下げることであり、究極の価値というピラミッドの頂点から、底辺まで筋道を通してみるということです。

 政権担当者や、政治家の先生方の中には、筋道を立ててものを考えることは苦手の方が多いようです。目に見えている部分だけで自分の立場に都合がよいように、憲法や法を解釈する方が少なくないような気がします。

 ですから、国民の監視は不可欠です。そうしないと、タイタニック号の二の舞を演じかねないのです。国民が政権担当者や国会議員の先生方の行動を監視する目を持たなければならないのです。そのためには、私たち国民も隠れている部分を見る目を養わなければなりません。


 〈「憲法改正限界説」〉

 前記のように憲法11条は、「基本的人権は、侵すことのできない永久の権利として、現在及び将来の国民に与へられる」と規定しています。憲法97条は「基本的人権は・・・現在及び将来の国民に対し、侵すことのできない永久の権利」と明記しています。ですから憲法96条の憲法改正の手続の規定には、明記されていませんが、基本的人権は、永久の権利であり、侵すことができないものであることを憲法96条の他の憲法の規定が明示しているのです。

 これらの規定は、憲法の中にあり、憲法をよく見ればすぐ分かる部分です。その意味では隠れているとは言えない部分です。これさえよく見ないで、憲法96条の改正手続に従えば、基本的人権を侵すような結果となる憲法改正も、無制限にできるなどという考え方はよくものを見ていない、「木を見て森を見ない」というような考え方なのです。政治家の中には、自分の主張を正当化しようとするあまり、このような理屈を言う人が時々見られますが、いかがかと思われます。

 私は憲法96条の憲法改正手続の規定に従っても、その内容によっては改正できないものがあると考えます、このような考え方は、「憲法改正限界説」と呼ばれています。このように考えるのが、憲法学者の中では、普通だと思います。

 その根拠としてポピュラーな学説(著者・芦部信喜、補訂者・高橋和之、発行所・岩波書店、「憲法第六版」)は、「改正権の生みの親は制憲権であるから、改正権が自己の存立の基礎とも言うべき制憲権の所在(国民主権)を変更することは、いわば自殺行為であって理論的には許されないと言わなければならない」と述べていますが、私もそれはその通りだと思います。

 また、その学説には、「近代憲法は、本来、『人間は生まれながらにして自由であり、平等である』という自然権の思想と、『国民に憲法を作る力(制憲権)が存する』という考え方に基づいて、成文化した方である。この人権(自由の原理)と前記にふれた国民主権(民主の原理)とが、ともに『個人の尊厳』の原理に支えられ不可分に結び合って、共存の関係にあるのが、近代憲法の本質であり理念である。したがって、憲法改正権は、このような憲法の中の『根本規範』とも言うべき人権宣言の基本原則を改変することは、許されない」と述べています。

 共鳴します。これまでも述べてきましたが、憲法の究極の価値は「個人の尊厳」なのです。ここが侵されるような改正が許されないことは、理論的に極めて当然のことなのです。

 憲法改正の限界は、憲法96条そのものには示されていませんが、憲法の前文や他の条項をよく見れば、その中に隠れて存在しているのです。それは、憲法の基本原則である、①国民主権、②基本的人権の保障、③戦争放棄です。

 のみならず、憲法の基本原則を生み出した人類普遍の原理、即ち、自然法とか根本法とか基本法というべき真理の中に憲法改正の限界は隠れているのです。憲法の基本原則を生み出した、いわば憲法の母体と言うべき部分は何か、という部分を見ることは、憲法改正の限界を知る上では、不可欠なことです。

 その部分を正確に見極めることは、私の力では到底不可能です。ですが、気付いた点だけでも、この後述べてみます。

 (拙著「新・憲法の心 第25巻 国民の権利及び義務〈その2〉」から一部抜粋)


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