司法ウオッチ<開かれた司法と市民のための言論サイト>




 〈大学人事に干渉し学問の自由を侵害した瀧川事件〉

 政府が学問の自由に干渉するようになったら、憲法の危機が始まっているのです。天皇機関説事件は、それを如実に物語っています。安倍政権を継承した菅政権は、戦前の軍国主義政権の轍を踏むような行動に走りました。そのような動きは、加速度が付いたら抑えられなくなります。そのことも歴史が物語っています。

 国家の主権者であり、憲法制定権者であり、改正権者である私たち国民は、学問の自由の侵害を、その芽のうちに摘み取らなければならないのです。そのために今、こんな駄文を書いています。

 瀧川事件は、京大事件とも呼ばれています。昭和8(1933)年に、京都帝国大学で発生した思想弾圧事件です。学問の自由に対する国家機関による不当な干渉です。

 事件は、京都帝国大学法学部の瀧川幸辰教授が、中央大学法学部で行った講演「『復活』を通して見るトルストイの刑法観」の内容が無政府主義的として、国家が問題化したことに端を発し、昭和8(1933)年4月、瀧川教授の著書が発売禁止処分になりました。国は、同教授の罷免を要求しましたが、同大学法学部教授会は、これを拒絶。国は、同教授を休職処分にしました。

 瀧川教授の休職処分と同時に、京大法学部は、教授31名から副手に至る全教官が辞表を提出して抗議しましたが、その後様々な経過を経て、辞表を撤回し残留した残留組と、辞表を撤回しないで辞職した辞職組とに分裂しました。

 瀧川事件に関連した京大を辞職した教官のうち、18名が立命館大学に教授・助教授などの職で移籍し、また、瀧川自身も事件後は同大学で講義を行うようになったそうです。

 国が大学の人事に干渉しては、大学の自治は成り立ちません。大学の自治が成り立たなければ、学問の自由は保障されません。

 瀧川事件は、国家権力が瀧川教授の講演内容が国の考え方と違うということから始まり、大学の人事に口を出し、大学の自治を侵害したもので、京大の教授らは、それに抵抗しましたが、これに対し、最終的には国民のバックアップがなかったということになるのでしょうか。

 国民は、口出しが出来ない状況になっていたという見方が正しい気がします。国民は、口の出せるうちに口を出すべきでした。権力が強大となっては、主権者といえども口を出すことが出来なくなってしまいます。それがおそろしいのです。


 〈芽は摘み取らなければならない〉

 瀧川事件発生の頃から、国はどんどん軍国主義に突っ走り、天皇機関説事件で見たように、学問の自由は侵害され、思想・良心の自由、表現の自由、宗教の自由、集会・結社の自由も制限され、基本的人権は無視されて、国民の命は虫けら同然に扱われ、国家があらゆる犯罪を、法の名前で犯すという戦争に突っ走っていくことになったのです。

 戦争絶対反対の身としては、まず学問の自由を守らなければなりません。だから安倍政権や菅政権の日本学術会議問題は看過できません。見過ごしてはいけない一大事なのです。これを見過ごしたら、9条の改定に自民党政権は、より近付いていくのです。

 戦前の日本における学問の自由に対する弾圧は、戦争という最悪の方向へ突っ走るためのスタートになったのであり、その結果、300万人を超える国民を殺したのです。キリスト教の教義に反するという理由で、それに反する学説に異を唱えた西洋の学問の自由に対する弾圧よりも、その与えた悪影響は絶大でした。

 二度と、学問の自由に対し、政権が干渉したり弾圧したりすることは許してはなりません。そのような芽が出たり、出そうだったりしたら、直ぐに摘み取らなければなりません。学問の自由を守る行動を取ることは、9条改定の芽を摘み取る方法の一つなのです。

 (拙著「新・憲法の心 第29巻 国民の権利及び義務〈その4〉」から一部抜粋)


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