司法ウオッチ<開かれた司法と市民のための言論サイト>

 
 
 どう見てもそのまんま本心としか思えない言動を堂々としておいて、問題化するとミスとして謝罪して引っ込める。政治家の舌下事件として散々目にしてきた、そんな場面を批判的に取り上げるはずのメディア自身が、同じようなことをやってしまう。「韓国なんて要らない!」と題した嫌韓特集を掲載した「週刊ポスト」は、作家らの絶縁を突き付けられる抗議を受けて、「お詫び」のコメントを出した。

 「お詫び」は、「誤解を広めかねず、配慮に欠けていた」などとする短いものである。抗議が意味する根本的な問題性に向き合っているわけでなく、「誤解」「配慮」不足に言及しているところは、「誤解を招いたとすれば」など前置きを付けて、「配慮」についてのみミスを認めて詫びる「失言」政治家と同じといわなければならない。

 しかし、詫び方の問題としてとらえること自体も適切かどうか。それよりも、政治家にしてもメディアにしても、そこまで確信的な言動をとったのならば、なぜ、堂々と自説を貫かないのかの方を問わなければならない。そうしなければ、本来、信念が問われる。そのことの方を恐れていないことになってしまう。

 そもそもそれほどの信念も熟慮もなく、そういう言動を生む心情や認識を持っている、ということでいいのだろうか。

 そういう捉え方はもちろんできる。「ポスト」がこの企画を堂々と進めた背景には、当然、嫌韓論調に拍手を送る読者の存在を想定していただろう。もし、部数でそろばんをはじいた結果、取り上げただけの企画で、中身はどうでもよかった、というのならば、それまでのこと。評価を加えるべきは、そういう視点からのメディアの質だ。

 ただ、そうではない、ということも考えられる。政治家もそうだが、あくまで主張そのものは、支持する世論や部数という別の目的に引きずられた、という以上に、そのときは確信的に「正しい」主張であったのではないか。つまり、影響力が大きい批判がたまさか出たために、確信的言動を全否定したことにならない範囲で、反省する姿勢をとった。それが前記おなじみの前置きを付けた、限定的謝罪でないか、ということである。

 常に、目に浮かぶのは、批判がなければ、あるいは批判が無視できるほど影響が小さければ、今ごろ、その言動に何食わぬ顔で、自らの主張として胸を張っている彼らの姿なのである。

 これは、一番無責任な姿勢としかいえない。職を賭してまでやった言動ではない、という覚悟、信念の問題であると同時に、言動の意味を主張し、社会に問うことも放棄しているからである。もし、この批判が出るような言動が発せられたことに意味を持たせるのであれば、本来、中途半端な謝罪でそれを引っ込めるのではく、やはり主張として堂々と社会に問うべきではないか。

 覚悟がなければそれも無理ということになってしまうが、もし、それが議論になるのであれば、少なくとも「けしからん」という批判で、なにやらうやむやの謝罪で引っ込める結果よりも、意味はある。

 ただ、別の見方もできなくはない。明らかに差別的であったり、人権侵害にかかわるような言動について、それが世論の批判の包囲網によって、その発信主体が撤回や謝罪に追い込まれたとすれば、それはある意味、その時点で、世論の健全さのものさしにできる、ともいえなくない。

 しかし、一方で表現の自由はどこまでも認められなければならず、「撤回や謝罪に追い込まれた」という点については、もちろん慎重な捉え方もしなければならないし、対立的世論が存在する現実そのものは、隠す意図があってはならない。その意味では、議論に至らず、ただただ目先の保身から、あるいは本心を隠し、その場しのぎの謝罪で、事態を収拾するという選択そのものが、社会にとっては最も無意味といわなければならないのである。

 前記「ポスト」の問題で、絶縁宣言をした一人である思想家の内田樹氏は、こう述べたという。

 「いいんです。欲情に阿らないと財政的に立ち行かないという出版社なんか縁が切れても」

 彼ら謝罪の主体たちが、前記したような言動に彼らを走らせるのは、財政的にプラスになったり、支持としてカウントにつながる、彼らが阿るべき私たちの欲情かもしれない。そして、中途半端な謝罪を彼らに選ばせるものは、それを当たり前として、「許される」環境を提供している私たち世論の悪しき寛容さかもしれない。メディアまでが、社会に問題の本質を問わず、その場限りの謝罪で逃げる姿を目の当たりにしていることを考えれば、私たちの姿勢と目線も、今、本質的に問い直されなければならないように思えてくる。



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