〈国民主権実践としての「9条の会」〉
全国各地に、憲法9条を守るための住民の集まりである「9条の会」がある。会員は9条を守るために、9条を改定させないために、長い間、日常的に力を出し合っている。これは、国民主権国家の在り方が、具体的な形となって目に見えている代表的な現象と言える。日本国の根底の理念である「国民主権」という考え方が、表面に表れた出来事であり、国民主権という理念が国民自身によって実践されている例として、特筆に値する。
憲法12条は、「この憲法が国民に保障する自由及び権利は、国民の不断の努力によつて、これを保持しなければならない」と明記している。この理念を実践している代表は、全国各地にある「9条を守る会」であると確信する。地方弁護士は地元の同会に参加してほしいと願っている。地方弁護士は、地方住民の先頭に立って、憲法を守る行動を起こす社会的使命があると確信する。
デモなども自分自身が主権者として、その時々にその意見を直接示す行動であるが、「9条を守る会」の行動は一時的ではなく、恒常的に普段から勉強をし、認識を深め、主権者として主張しようというもので、これまであまりの見られない形の国民主権を具体的に実践している姿である。しかも、全国各地に存在する組織である。
そういう意味で意義深い活動だと評価しなければならない。普段から憲法9条を守るために国民が集まって勉強し、9条を守るためにはどうしたらよいかを議論し、共に行動している姿には頭が下がる。これこそ国民主権という理念の実践である。
「9条の会」の会員の中にも地方弁護士はいるが、弁護士でない会員が多い。その会員が知恵を出し、力を結集し、9条を守るために、9条を改定させないための活動を続けている。地方弁護士も「9条の会」のメンバーとなっている人は少なくないが、弁護士の社会的使命を意識しているなら、もっと地方弁護士は同会に参加すべきだと思う。
国民主権と言いながら、何もしない国民であってはならないのであり、9条を守るために全国各地で活躍している国民の姿は、国民主権国家のあるべき姿であり、憲法12条のいう国民の不断の努力というものであり、「9条の会」の存在には深く共鳴する。
地方弁護士の社会的使命は、人命と人権を守ることにあり、そのため戦争には絶対反対しなければならないと考える身としては、もっと地方弁護士は「9条の会」に参加して欲しいとの思いは強い。地方弁護士は「9条の会」で、中心的役割を果たしてほしい。司法試験合格を目指し、勉強した法的知識を世のため、人のためにもっと活かしてほしい。勉強は試験に合格するためのものだけではない。勉強の成果をもっと活かさなければ勿体ない。
〈地方住民の世の中への提言の代言人〉
地方弁護士には、「9条の会」のメンバーとなって、「戦争絶対反対」「9条改定阻止」のための活動をすることは望ましいと確信するが「9条の会」を離れても、「戦争絶対反対」「9条改定阻止」「人命と人権を守る」などという誰もが持っている思いを地方住民に代わって発信しなければならない社会的使命があることを強調したい。
そういう意味で、地方弁護士は地方住民の代言人にならなければならない。地方弁護士は、地方住民の考え方や言いたいことを整理しまとめ、書いたり言ったりしなければならない。地方住民の代言人とならなければならない。
国民には、思想良心の自由、表現の自由、行動の自由、結社の自由等が保障されている。これは、弁護士にも保障されている。だから「戦争絶対反対」「9条改定阻止」「人命と人権を守る」ことは、弁護士の法的義務であるから、地方弁護士もそのような行動を取らなければならないなどと、個々の弁護士に教養するつもりはない。
しかし、法律がどう言おうと、憲法がどう言おうと、「人命と人権を守ること」「戦争をしてはならないこと」は、憲法や法律以前にある真理である。このことは、これまでも述べてきた。これまで見てきた憲法改正の動機、憲法の前文、憲法9条の心という面から言っても疑いの余地はない。
これに反する考え方の国家機関や政治家や国民や世間に対して、憲法改正の動機、憲法前文、憲法9条の心などを説き知らせることは、地方弁護士の社会的使命という面から見ての代言人としての役割である。憲法や法律を学び、法曹となった身の地方弁護士は、他の一般住民よりは憲法に関してより理解しているはずである。この知見を地方住民に知らせるのは、地方弁護士の社会的使命であると思うことも、それを語ることも、これもまた思想の自由、行動の自由、表現の自由として許される。
このことは国家機関、地方機関に対し、そして主権者である国民に、住民自治の主人公である地方住民に対して発信し続けることは、地方弁護士の社会的使命という面における代言人的役割ではないか、という思いに至っている。これは地方弁護士の、依頼者からカネを貰って、法廷で依頼者に代わって言う商売面における代言人としての役割とは、違う面での代言人としての役割ではないかという思いに至っている。
地方住民の中にも、心ある人は国家機関に対し、大企業に対し、大組織に対し、各界の指導者に対し、そして仲間である国民や地域住民に対し、いわゆる世間に対し言いたい人は大勢いる。しかし、その言いたいことを適切にまとめて表現することも、また言いたいことをどういう場で、どういう方法で発信したらよいかも分からない人が多い。法的規制も気にかかる。地方住民が言いたいことがあても、それを世の中に言い伝えることは、現実には難しい。
そこは地方弁護士は、心ある地方住民に代わって、国家機関、地方機関、大企業、大組織、各界の指導者に対し、そして何より主権者で、自治権者である世間というか仲間に、心ある地方住民の声を届ける役割を果たさなければならない。地方弁護士は、商売として、依頼者の代言人として法廷で言うだけではなく、地方住民の世の中への提言の代言人という役割を果たすことが社会的使命であると確信する。
世の中への提言の方法は、講演と本の発行が古くからの方法であり、古い人間の身としては主にその方法でやってきた。そのやり方で地方弁護士として54年間やらせてもらったという思いではいる。地方弁護士の、社会的使命という面における代言人的役割をどの程度果たしてきたか振り返ってみたい。それを確認し、これから先はどうすべきかを考えてみたい。
(拙著「地方弁護士の役割と在り方」『第2巻 地方弁護士の社会的使命――人命と人権を擁護する――』から一部抜粋)
「地方弁護士の役割と在り方」『第1巻 地方弁護士の商売――必要悪から必要不可欠な存在へ――』『第2巻 地方弁護士の社会的使命――人命と人権を擁護する――』『第3巻 地方弁護士の心の持ち方――知恵と統合を』(いずれも本体1500円+税)、「福島原発事故と老人の死――損害賠償請求事件記録」(本体1000円+税)、都会の弁護士と田舎弁護士~破天荒弁護士といなべん」(本体2000円+税)、 「田舎弁護士の大衆法律学 新・憲法のこころ第30巻『戦争の放棄(その26) 安全保障問題」(本体500円+税)、「いなべんの哲学」第1~24巻(本体1000円+税、13巻のみ本体500円+税)も発売中!
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