司法ウオッチ<開かれた司法と市民のための言論サイト>



 〈政治家の暴走を止める心構えの大事さ〉

 「地方弁護士の役割と在り方(第2巻)――地方弁護士の社会的使命」では、自分が思い込んでいる地方弁護士の社会的役割を果たすための、その具体的な方法として、憲法の伝道師、憲法の番犬、地方住民の代言人になりたい、強きをくじき、弱きを助けたいと書き、ここでもそれを述べてきた。さらに、「老馬の智で道案内したい」として、経験から得た知恵で、生き方に迷う地方住民に対し道案内をして、人命と人権を守りたいということを伝えたい。「盲導犬になりたい」というキャッチフレーズでもよい気がする。

 人命と人権を守るためには、国と国とが武力を使って殺し合うという、正気を失ったような政治家の暴走を阻止しなければならないという、国民一人一人の普段の心構えが何よりも大事であると確信している。その心構えを持つように地方住民に知らせるのが、地方弁護士の社会的使命である。

 プーチンのロシア軍がウクライナに侵攻していることを、ロシア国民はどのように思っているのだろう。ロシア国民は、プーチンの暴走を止められなかった。これはロシア国民の責任でもある。そのようなロシア国民を創り上げた指導者の責任である。今のロシアには、適切な指導者が国民や地方住民の身近にいなかったのだ、と思える。

 国民の普段の心構えの大事さについては、機会ある毎に語り書いてきた。司法試験に合格して、弁護士資格をもらい、法律の専門家になった身の責任という思いもあってそうしてきた。これは、国民が政治家の暴走を止めなければならないという思いによるものである。戦前の日本国民や、現在のロシア国民のようになってはならないとの思いによるものである。そういう国民にならないように、地方住民に知らせることが、地方弁護士の社会的役割という思いでやってきた。

 人命と人権を守るためには、法律や政治に限らず、日常生活の中で普段からやらなければならないことがある。日常生活の中で、人命と人権を最も大事にしなければならない、という意識を持ち続けなければならない。日常生活は、法律によって規制される面があることは否定できないが、法律だけによって日常生活は営まれているのではない。人命と人権を守るためには、生活全般に目を向け、個々の人間の命と人権が最も大事だという認識を持って、人命と人権が守られるような生活が営まれているかを、普段から監視しなければならない。


 〈患者体験を伝える意味〉

 人命を守るために、日常生活において最も大事なことは、医療つまり病気やケガを治すこと、コロナのような感染症の予防と治療であることは、誰でも知っている。医療は医師が担当すべき分野であるが、高齢者になると何度か患者を体験する。患者を体験すれば、患者の目で医療が見えてくる。老馬の智で患者の経験を世間に知らせ、参考にしてもらうこともできる。

 60歳から70歳までの10年間で、10回を超える手術と、薬物療法や食事療法や、人工透析治療等を経験した身として、「患者になって思うこと」などの数多くのエッセイと、「患者の目から見た医療」という本を20冊余り発行した。

 これは法律に関する地方弁護士の社会的使命ではないが、人命と人権を守るという意味では、法律に関する話よりも、世のため人のために身近で、直接役立っているという実感している。医療に関する講演や、医療に関する駄弁本に対する感謝の言葉や令状は、全国から数多く頂戴していて、法律に関するそれよりはるかに多い。

 患者の体験を語ったり、書いたりすることは、「地方弁護士の社会的使命」とは直接には言えないが、人命と人権を守るという意味では、世のため、人のために役立つことは間違いない。広い意味では、地方弁護士の役割の一つとも言えなくはない。地方弁護士事務所という看板を掲げ、地方住民の悩み事の相談に応じている立場としては、法的知識だけに限らず、生きる上での知恵を教えることは望ましい。これも老馬の智で、地方住民の生き方の道案内をすることになる。

 「老馬の智で道案内をしたい」という願いは、患者を体験し、患者としての体験記を書き、講演をし、患者や患者の家族のみならず、ドクターなど医療関係者とも深い付き合いで得た智を、地方の保健関係の本に14年にわたり、「健康エッセイ」として連載させてもらい、既に一部は叶えられているようにも思える。

 人命と人権を守るという使命は、法律の面ではないが、医療という日常生活の大事な一面においても、それなりにやれてきたと自負している。人命と人権を守るための知恵は、法的知恵だけではない。求められているのは、人間総合力である。

 弁護士も一人の人間である以上、人間として、人命と人権を守ることに役立てられれば、法律に限らず、医療に限らず、生き方全般に渡って役に立ちたい。それができて、真の道案内が可能となる。法律に限らず、医療のこと、経済のこと、人間関係のことなど、広く地方住民の悩みを一緒に考え、地方住民の役に立つことも、地方弁護士の社会的使命と考えてもおかしくない。地方弁護士の役割を、法律の条文と判例に関する知識の切り売りに限定しなければならない理由はない。

 (拙著「地方弁護士の役割と在り方」『第2巻 地方弁護士の社会的使命――人命と人権を擁護する――』から一部抜粋


 「地方弁護士の役割と在り方」『第1巻 地方弁護士の商売――必要悪から必要不可欠な存在へ――』『第2巻 地方弁護士の社会的使命――人命と人権を擁護する――』『第3巻 地方弁護士の心の持ち方――知恵と統合を』(いずれも本体1500円+税)、「福島原発事故と老人の死――損害賠償請求事件記録」(本体1000円+税)、都会の弁護士と田舎弁護士~破天荒弁護士といなべん」(本体2000円+税)、 「田舎弁護士の大衆法律学 新・憲法のこころ第30巻『戦争の放棄(その26) 安全保障問題」(本体500円+税)、「いなべんの哲学」第1~26巻(本体1000円+税、13巻のみ本体500円+税)も発売中!
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