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 〈親族間の絆を深めるための相続〉

 相続で骨肉相食むような争いとなる最大の原因は、相続問題を法律だけで解決しようとする点にあると思います。相続問題を法律や裁判で解決した方がよいと考えるのは、その精神的、経済的、時間的負担が、どれほど大きいかを知らないからだと思います。

 そして、互いに相手の気持ちを思い、相手の気持ちに歩み寄ろうとしないから、この世で最も身近で最も大切な親子、兄弟などの間で、血で血を洗う最低最悪な争いが生まれるのです。残してくれた人の気持ちと残された人の気持ちを大事にしないから楽しく生きるための相続が、苦しむ原因となってしまうのです。

 私の、みのる法律事務所では、法律論に入る前に、関係者の気持ちに寄り添うためには、どうしたらよいかを考え、関係者全員の認識の共有、理解、納得の上での歩み寄りによる合意の形成に向けて努力をすることにしています。

 その相続に関係した全員が「これでよかった」と心の底から納得する遺産分割協議書を作成し、これから先は、これまで以上にいい関係にしてあげることを目指しています。50年を超える弁護士としての経験で、最近やっとその目標を達成できるようになりつつあるという実感が得られるようになりました。

 「人生は、いまの一瞬を、まわりの人といっしょに、楽しみ尽くすのみ」という「いなべんの哲学」を提唱している身としては、相続問題て神から与えられたともいうべき、関係の最も身近で最も大切な人との間で、争いや揉め事になることは残念でならないのです。

 もっとも身近で最も大切な関係にある人が、「人生をいっしょに楽しみ尽くす」のではく、「骨肉相食む争い」をし、「親族関係断絶」となってしまっては、バースディプレゼントは「毒のプレゼント」となりかねないのです。

 「相続は、楽しく生きるためのアイテムである」ということは、はっきりと認識しなければなりません。そこから、楽しく生きるための相続はスタートするのです。相続は、親族間の絆を深めるありがたいものなのです。遺産を残す人は、残された人たちが楽しく生きられるようにと思い、一生懸命働いて遺産を残すのです。

 その遺産をめぐって、残された人間の間で骨肉相食む争いをするということになったら、遺産を残した人はどう思うでしょうか。相続に関する法律の知識を得る前に、相続は親族間の絆を深めるためにあるということをしっかり認識してほしいのです。


 〈人間力が求められる弁護士〉

 法律の知識より人間として、まわりの気持ちを考えてほしいのです。まず。遺産を残してくれた人の気持ちを考えて下さい。遺産を残した人は、遺産をもらう人の幸せのために遺産を残したのです。その気持ちを考えれば、残された親子、兄弟間で遺産の取り合いの争いをするなどということはできないはずです。

 残された人たちが幸せになってほしいとの一心で一生懸命働き、残した財産を残された人たちが分取り合戦をすることは、遺産を残した人の気持ちに反します。繰り返しますが、相続は、最も身近で最も大切な親族間の絆を深めるアイテムです。このことを忘れてはならないのです。

 相続に関する法律知識や裁判に関する情報などは、いまや弁護士に聞くまでもなく、ネットには溢れています。弁護士は、ネットで分かるような知識を切り売りするだけでは、あまり世のため、人のためにはなりません。

 田舎弁護士には、相続問題は生き方の問題ですから、どういきるべきかをクライアント(相続者、依頼者)と、いっしょに考えてやれるような真摯な取り組みと、それ相応の人間力が不可欠となります。最近特に、そのことを強く思うようになりました。

 弁護士や裁判官は、法律と判例を知っているだけでは足りないのです。人の気持ちを知らなければならないのです。

 そして、相続は楽しく生きるためのアイテムであることを相続問題で悩む人に説明し、法律に拘り、裁判となって親族関係断絶などにならないようにアドバイスしなければならないのです。それができるためには、人間力が必要なのです。

 裁判となったら、どのように勝つかより、裁判にしないで関係者が幸せになるようにするためには、どうしたらよいかを、教えられるような弁護士になりたいのです。

 (拙著「いなべんの哲学 第6巻 」から一部抜粋)


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