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 〈衆愚政治〉

 憲法の基礎理論に関する話の中で、一言付言したいのは、多数決原理を中核とする民主主義の陥りやすい欠点についてです。それは、数の横暴とも言うべき政治となりかねない面があるということです。

 特に、選挙で大勝した政党が国会で数を頼んで少数意見を封じてしまったり、時勢やムードに煽動された大衆が、反対派の活動を強く押さえつけてしまったりし、「多数決で決めたのだから、これに反対する者は違法者」などという烙印を押しかねない一面もることを強調したいのです。

 どんなに非難される行為を繰り返しても、その都度国会を解散させ、選挙で大勝したら、国民に追認されたとする政権の存在は、民主主義の持つ欠陥そのもののように思えるのです。

 そういう政権を選出している国民は「衆愚」、つまり「愚かな人々の集まり」と呼ばれても仕方がないです。非常識とも思える発言を繰り返す大統領を選んだのは、アメリカ国民です。トランプ大統領の政治のやり方は、後の世の人に「衆愚政治だった」と言われかねません。日本だって同じです。

 「衆愚政治」について、角川必携国語辞典は、「大衆のおろかな人々が集まってする政治。民主主義をあざけっていうことば」と解説しています。広辞苑は、「多数の愚民による政治の意で、民主政治の蔑称。もと古代ギリシャのアテナイでの民主政治の堕落形態を指す」と述べています。

 これは、アテナイだけの話でしょうか。現代日本の政権の政治には全く関係がないと言い切れるでしょうか。安倍前政権のやり方や政治手法には多くの疑問を感じながらも、安倍政権を選挙で勝たせてきたというか、それに代わる政権を創れないできた私たち国民は、衆愚と呼ばれないのでしょうか。


 〈後世に「衆愚」と呼ばれないために〉

 最近のはやり言葉のひとつに、「ポピュリズム」(大衆迎合主義)があります。イギリスのEU離脱の国民投票などの際に使われました。日本国憲法の国民投票となったら、この言葉は使われそうです。

 「ポピュリズム」という言葉について、広辞苑は、「①1890年代アメリカの第三政党、人民党(ポピュリスト党)の主義。人民主義。②1930年代以降に中南米で発展した、労働者を基盤とする改良的な民族主義的運動。アルゼンチンのペロンなどが推進」などと解説しています。

 私は、日本で憲法改正の国民投票が実施されるようなことがあったら、後の世の人々に「あれは衆愚政治の典型」などと、言われることのないようにしたいのです。「大衆の一時の熱気に押し流された」と反省するような結果は残したくないのです。憲法改正権者である一人一人が、憲法96条の憲法改正手続の規定の裏に隠れている部分を見極めて、一時の勢いやムードに流されないで冷静な判断をしてほしいのです。

 民主主義は多数決原理ではありますが、数の暴力という多数決原理の持つ欠陥も十分に認識しなければなりません。ですが、民主主義国家においては、多数決原理を無視することはできません。私は、現在の日本国憲法の基本原則は、変えるべきではないと考えていますが、万が一、国民投票となったら、憲法の基本原則を変えるような改正には、国民の多数を以って反対しなければなりません。そのためには、憲法の言う人類普遍の原理と、その根底にある真理を探究しなければなりません。

 後の世の人々に、「あの時代の日本人は、衆愚だった」と言われることのないように、憲法の裏に隠れている部分を見極めましょう。時の政権の思惑などに乗せられないように、賢い民衆となりましょう。目を凝らして、耳を凝らして隠れている真理を見極めましょう。衆愚とは言われたくありません。=この項終わり
 (拙著「新・憲法の心 第25巻 国民の権利及び義務〈その2〉」から一部抜粋)


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