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 〈「命てんでんこ」〉

 東日本大震災・三陸沿岸巨大津波の際に、「命てんでんこ」と語ったおばあさんがいましたが、自分の命は、自分で守るという気持ちは不可欠です。自分の命は、他人任せなどにはできません(「てんでんこ」=「各自」「めいめい」を表す東北地方の方言・編集部注)。

 「命てんでんこ」は、津波の時だけではありません。それはどんな場合にも当てはまります。新型コロナウイルスにおいても同様です。新型コロナウイルスの感染防止の最も効果的な方法は、一人一人が感染者に接触しないことです。国や地方自治体が感染防止の方法を講じることは当然ですが、一人一人が感染者に接触しないように「命てんでんこ」を意識し、自分で自分の命を守らなければなりません。

 安倍前首相のご夫人は、新型コロナウイルス問題が発覚し、三密回避が言われている中で、著名人と桜を見る集まりに参加していたことが報道されました。国や東京都が、人の集まりを自粛するように呼びかけている時に、行政のトップの立場にある首相の夫人たるものが、このような行動に走るなどという、無神経ぶりにはあきれ返りました。そんなことをしているから、国民の中には、新型コロナウイルスが感染拡大していることを承知で、卒業旅行などと浮かれる連中も出てくるのです。

 一国の首相夫人という自覚が全くありません。気付かない人、考えない人の典型です。「桜を見る会」での安倍前首相夫婦の姿や、集まったメンバーを垣間見ていると、そういうレベルの取り巻きたちに囲まれた、そういうレベルの夫婦なんだと思う他はなくなります。このような指導者を、あまり当てにしない方がよい気がしてきます。

 トランプ大統領は、「新型コロナウイルスとの闘いは戦争をしているようなものだ」と語ったそうですが、闘いであることは間違いありません。人類同士の戦争ではありませんが、新型コロナウイルスという異人類との戦争と言えなくはありません。

 そして、この闘いは、人類同士の闘いでは兵士が闘いますが、子どもも老人も女性も参戦しなければなりません。赤子も寝たきりの老人も闘わなければなりません。まさに、老若男女を問わず、一人一人の問題です。新型コロナウイルスとの闘いにおいては、まさに「命てんでんこ」です。子どもも老人も女性も、すべての人が戦士なのです。新型コロナウイルス問題は、全人類レベルの問題であると同時に、例外なしの人間一人一人の問題でもあるのです。

 そんなことに気付かない夫婦が、日本国のトップにいるかと思うと、不安を覚えました。こういう人だから、9条の真価にも気付かす、自分の地位や名誉のため、在任中に9条を改定しようなどと、罰当たりな発想が浮かぶのだ、と。

 なぜ、9条改定を主張するかといえば、アメリカの意に従うこと、自分の地位を保持したいことと、在任中に大仕事をした首相という評価を残したい、という全く個人的な思惑、つまりは彼個人の個人的欲望を満足させようというもので利他欲が見られない。自分の利益や欲求だけを追求する利己主義に思えてくるのです。


 〈一人一人が考え、行動し、自分の命を守る〉

 自分の命は、自分で守らなければならない、と本気で考えれば、自分で病気への対策を立てるのは当然のことです。そのため普段から、健康診断を受け、異常が見つかれば治療も受けます。

 新型コロナウイルスから我が身を守るためには、適切な治療方法、予防方法がない以上、今、我々ができることは、「他人から移されてはならないし、他人に移してはならない」ということを徹底するほかありません。自分が感染したら、自分の生命が危険であると同時に、他人に感染させる危険が生まれることを自覚しなければならないのです。

 新型コロナウイルスに感染したら、自分が感染源になってしまうことを強く意識しなければなりません。人類が一致団結することと同時に、一人一人の自覚が求められるのです。三密回避と早期検査を受けることを、各自が実行しなければなりません。

 新型コロナウイルスは、人類レベル、世界レベルのマクロの問題と、一人一人というミクロの問題とを同時に考えさせる問題を提供しています。

 過去の歴史を振り返ると、病気以上に怖いのは戦争です。第二次世界大戦では、地球上で6000万人以上、日本だけでも300万人以上が死にました。新型コロナウイルスによる世界中の死亡者は、令和3(2021)年1月14日現在、197万人を超えています。こちらも怖いですが、6000万人の死者を出した戦争の怖さを改めて思います。新型コロナウイルスの感染拡大と同時に、戦争にならないよう、国はもちろんですが、人間一人一人が気を付けなければなりません。

 安倍前首相や同夫人は、その辺の認識が足りませんでした。大臣ポストなどが欲しく、安倍政権にすり寄って、9条改定に賛成するような態度を取った政治家たちにも腹が立ちました。そして、そのような政治家を国会に送り出している国民にも腹か立つのです。

 半分以上が4年生大学を卒業している、といわれるこの国の国民は、知識はあるかもしれませんが、気付くことが少なく、危機感が薄く、考えることをしない。そのうえ誰かが何とかしてくれるだろうなどと、他人任せすぎる。最も残念なのは、行動力に欠けていることです。

 新型コロナウイルス問題は、いいチャンスです。猛省したいと思います。「命てんでんこ」です。一人一人が考え、行動し、自分の命は自分で守らなければならない。それが世界規模の問題を考えるうえでも基本となるのです。人類は一人一人の人間のトータルです。人類の安全は、一人一人の命の安全が基本です。

 「命てんでんこ」は言い得て妙です。自分の命を守り、身の回りの人の命を守ることが人類を守るのです。新型コロナウイルスに感染しない、感染させないということと、戦争はしない、させないということが、一人一人の命を守るために不可欠であることを強調したいのです。それが、人類を守るのです。

 (拙著「新・憲法の心 第27巻 戦争の放棄〈その25〉」から一部抜粋)


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