分子生物学の発展や遺伝子研究の驚異的な進歩は、学生時代にすりこまれた歴史観や文明に対する考え方、パラダイムを根本的に変えつつある。リーマンショックで資本主義礼賛の風潮はふっとんでしまったし、残念ながら中国の国営企業を中心とする国家資本主義も成長拡大を続けている。中国には13億5千万人の人々、インドには12億1千万人の人たちが住んでいる。この巨大な人口を抱える国々が、21世紀の世界の中心となって行くのだろう。
5千年の歴史を持つ中国が、今や世界をリードする産業力と軍事力を持ったということは、明治維新以来の欧米思想崇拝からくる日本人の考え方価値観を根本から見直す必要が出てきた。マルクスの社会主義もエンゲルスの自然の弁証法も、そもそもヨーロッパの典型的な思弁なのであって、かってその思弁を真実と錯覚し崇拝していた精神は、いったい我々日本人のどのような脳細胞と脳神経の作用によるものだったのであろうか。
本サイトのトップで河野編集長が、「安倍カラーについてどう思うか」との問いを投げかけておられたが、安倍カラーは、戦後日本に生まれた戦争を知らない安倍氏の平凡な能力が、その能力を精いっぱいに使って描いたところの、これからの日本戦略論なのであって、ようするに富国強兵、優秀な日本民族が昨日までの後進国に負けてたまるかというポンチ絵なのだと思う。私から見れば、科学に弱い、機械に弱い、計算に弱い、感情過多の日本人特有の島国根性が描かせた誰でも思いつく戦略と言える。しかしこれを笑うことは出来ない。実は、若者含め半数以上の国民が、安倍カラーを支持容認しており、そのことは内閣支持率にも表れている。
中国は、日本人の侵略にも関わらず、200年をかけて、ようやく工業化産業化都市化に成功したが、その成功は日本の明治鹿鳴館文化人と違って、中国人が中国人独自の頭脳と経験によって独力で成し遂げたものだ。5000年の歴史と人口12億人の大国が自信を回復しつつあるが、そのような中国にとっては、かってのアジア侵略者であった西洋人が゙作った国際関係理論や法規、すなわちウエストファリア体制などを遵守する義務は必ずしもない。日本人の知識人には、多数政党制による民主制の中国における欠落を批判する者が多いが、天命に従う中国人にとってみれば片腹いたしといったところだろう。お前に言われたくないというところではないか。
「中国が世界をリードするとき」(NTT出版)の著者、マーテイン・ジェイクスは、日本は「実際には複数政党制なのだが、1950年代半ばからほとんどずっと自民党政権が続き、党内の派閥争いの方が他党との政争より重要である。 したがって権力がさまざまな異なるレベルに分散され、その中でも官僚(従来の儒教スタイルの)がもっとも重要である」と言っている。民主党がぶざまに崩壊して残ったのは無敵の官僚組織であった。その無敵の官僚組織の上に安倍氏麻生氏が乗っかっている。
「歴史とは支配者(たいてい悪党)と兵士(たいてい愚か者)によってひきおこされた出来事(たいてい重要でない)に関する記述(たいてい偽り)」アンブローズ・ビアス 悪魔の辞典