司法ウオッチ<開かれた司法と市民のための言論サイト>

 

 2017年1月16日、今日重版が出ているということだったので「サピエンス全史」の(上)を求めて書店に行った。ユバル・ノア・ハラリという名のユダヤ人歴史家の書いた本が、今、全世界でベストセラーになっているという。私は「サピエンス」(下巻)を読んだのだが、最近読んだ本で、これほど私の好みとマッチングした本もない。

 

 著者によると、宗教には、有神論宗教と人間至上主義宗教の二種類があって、有神論宗教は、天上の神を崇拝し、人間至上主義の宗教は地上のホモサピエンスを崇拝するという。人間至上主義(多くの他の種の生命を絶滅させてきた)には、三つの宗派があるという。もっともポピュラーとなった宗派は自由主義の人間至上主義で、「この宗派は、『人間性』とは個々の人間の特性であり、従って個人の自由はこの上なく神聖であると信じている」(下巻35ページ)。

 

 トランプ氏がこの宗派に属するのは当然だが、ケインズよりハイエクの方が好きな私もこの宗派に属する。先進国にはこの宗派に属す人が多いが、日本には意外とこの宗派に属する人は少ない。その日本人でも幼児のころわがままに育てられた人は大体大人になればこの宗派に属することになる。「自由主義者によれば、人間性の神聖な性質は、全ホモサピエンスの一人ひとりに宿っているという。個々の人間の内なる核心が、世界に意味を与え、全ての倫理的・政治的権力の源泉となる」。この宗派の戒律は、一まとめに「人権」として知られている。

 

 昨日までは盛んだった、私のお友達にも多いが、社会主義的な人間至上主義という重要な宗派もあるという。この宗派は、「全人類の平等を求める。社会主義者によれば、不平等は人間の尊厳に対する最悪の冒瀆だという。何故ならそれは、人間の普遍的本質よりも皮相的な特性を優遇することになるからだ。たとえば、貧しい者よりも富める者が優遇されたら、あらゆる人間の普遍的本質よりもお金を重んじることになる」(下巻36P)。

 

 今は廃っているように見えるが、決して油断できない宗派もある。進化論的人間主義派でその有名な代表がナチス党、いまでも日の丸と鍵十字の旗をなびかせている若者をほんのたまに見ることもあるが、その人たちは神経質で気の弱いアイデンテテイー喪失の若者で、改装バイクに乗って世間に迷惑をかけている。ナチスは、「人類は不変で永遠のものではなく、進化も退化もし得る変わりやすい種だと信じていた。人類は超人に進化することも出来れば人間以下の存在に退化することもありうるというのだ。」

 

 人類の進化の過程で、ネアンデルタール人のような「劣った」個体群は絶滅した。残ったホモサピエンス中の人種の中では白人の「アーリア人種」がもっとも優れているから、ユダヤ人、黒人、黄色人種はいずれ進化の過程で絶滅する。従って、アーリア人種、アングロサクソンは、進化の自然選択を待つまでもなくそれらの劣等人種を排除せねばならないというわけだ。この進化論も第二次大戦までは一定の説得力を持っていたし、1960年代までは白人至上主義はアメリカで主流のイデオロギーであり、オーストラリアも1973年まで白人以外のオーストラリアへの移住を禁止していた上、先住民には選挙の投票権もなかった。

 

 しかし、このような見方の誤りは、第二次大戦後の生物学の発展、DNA分析や分子生物学の発展で証明されたが、しかし今なお一部白人の中には人種的偏見を隠さない者もいる。トランプ氏の心根には白人至上主義があるのではないかと私は疑っている。欧米でビジネスを経験したことのある日本人は大抵この種の差別を経験しビックリするものだ。日本人は、白人のロシア人には傲慢だが、背の高い金髪碧眼のアングロサクソンにはひりつくような劣等感を感じてしまうのである。

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