認定司法書士の訴訟代理権の範囲については、様々な解釈があって、すでに幾つかは事件化して判決も下されている。この問題について毎日新聞は、平成24年5月30日付け「記者の目」欄で、過払い金の返還請求などを巡り、日本司法書士会連合会と日本弁護士会連合会が、その業務範囲、つまり業務代理権の範囲を巡って対立する、「異常事態になっている」と報じている。
この「異常事態になっている」という報道にはいささか疑問を感じる。この債務整理についての司法書士の業務範囲については、すでに立法者である法務省側の見解が明らかにされているし、判決の解釈もおおむね弁護士側主張の債権額説ではなく経済的利益説を採用しているように見受けられる。
そもそも従来から、司法書士は、強力な自治権の認められた弁護士会と違って、懲戒権者である法務省側の有権解釈に従うのが普通であった。陰で今でもブツブツ言うものもいるが、司法書士会連合会としては、価格競争、広告解禁にも素直に従った。ということであるから、和解含め訴訟代理権についてを、ことさら弁護士会と争うというようなことはあるまい。もちろん立法政策としては日本司法書士会連合会にも様々な意見、要求があるのは当然だ。
140万円の訴訟代理権の範囲を巡る問題は、記者氏の指摘するような弁護士会と司法書士会との問題では無い。むしろ弁護士界の業務独占体質と自治能力に対する国民の切実な関心、それに対する弁護士集団との問題なのである。
しかし、だからといって司法書士が訴訟実績を積まずに冷ややかに国民と弁護士との関係を眺めていれば良いというような問題でもない。どちらかと言えば規制改革の大波の中で棚ボタ的に得た簡裁訴訟代理権を行使せずに、国民の期待にも十分に応えず、怪しげな過払い金談合和解のようなことを続けて、こそこそ小金儲けに走っていれば、このせっかくの武器も近いうちに国に召し上げられてしまうだろう。
ここに、認定司法書士の代理による和解契約が無効とされた、さいたま地方裁判所、平成21年1月30日付け判決(平成19年(ワ)第2229号不当利得返還請求事件)がある。司法書士への和解契約の依頼人である債務者から訴えられたのは、司法書士代理人ではなく、債権者CFJ株式会社であるが、司法書士が代理人として債権者CFJ株式会社と締結した和解契約が無効とされ、債権者CFJ株式会社に前記和解契約による支払い分の不足金として60万155円の支払いが命ぜられたという判決である。
この判決においては、債務整理における認定司法書士のあり方の一端が良く見えてくる。次回ではこの問題を考えて見よう。