〈現実と乖離してしまう裁判所の結論〉
裁判所を利用して相続事件を解決すると、現実と乖離した解決となることがあるという一例を、前話に絡ませて話してみます。
裁判所では、田舎の土地・建物であっても、遺産として残っていれば、プラス財産としてカウントします。一般的には、市の固定資産評価額位は、プラス財産として、遺産分割案を考えます。つまり、土地・建物を取得した人は、それだけプラス遺産をもらたという取り扱いをします。
ですが、前話で述べた通り、田舎の土地・建物は、実際はお荷物なのてす。もらってもいらないのです。マイナス財産として計算しなければ、ならないのです。それが最近の田舎の現状です。
最近、そのような認識を持つ裁判官も出てきましたが、多くの裁判官や調停委員の先生方は、土地・建物を借金と同じように被相続人が残したマイナス財産と考えることには、抵抗があるようです。私のように、土地・建物を取得する相続人には、無償で、土地・建物を取得させるだけではなく、その管理・処分費用を払うという考え方までは、踏み切れない人もいます。
そのような方が解決案を考えると、現実と乖離した結論になってしまうことが出てきます。そもそも、親が残した遺産の分け方を、家族の事情や地方の現実をよく知らない裁判所で決めてもらうということは、妻や子のためと思い、汗水垂らして残した財産の分け方としては、如何なものでしょうか。そこまでいく前に、相続人間で話し合い、家族全員の事情なども考慮に入れ、理屈を最優先させる裁判所の解決に委ねる前に、現実に適応し、互いに我慢のできる解決をすべきではないでしょうか。
〈「生前協議書方式」と「四十九日方式」〉
私は、これまで相続問題を裁判所に持ち込まないために、現実に即した内容で早期解決をしなければらないと考え、「生前協議書方式」と「四十九日方式」という方法を提唱してきました。
「生前協議書方式」というのは、被相続人が生きているときに、被相続人と相続人が一堂に会し、被相続人が亡くなったら、その遺産は、どのように分けるか、誰が実家を継ぐか、農地は誰が耕作するか、葬儀費用や家の管理等の負担は、誰がどのように分担するか、墓の管理はどうするか等を決めておくという方法です。
「四十九日方式」というのは、もし、「生前協議書」を作っていなかった場合、四十九日の法事までに、相続人間の遺産分割協議書を作ってしまうという方法です。遺産分割を先延ばしにしていると、相続人の連れ添いなど相続人以外の人が干渉したりするケースが出てきます。こうなると、親・兄弟の気持ちだけでは決められず、ややこしくなります。その前に、四十九日の法事までに、どんな遅くなっても百か日の法事までには、遺産分割協議書を作ってしまうという方法です。
裁判手続を取ったら、解決が現実から乖離したものになりかねないばかりかでなく、解決まで数年かかることも珍しくありません。のみならず、裁判手続までいってしまうと、親子・兄弟間に亀裂が入り、修復できない溝ができかねません。まさに、骨肉相食む争いとなり、祝儀にも、不祝儀にも互いに呼ばない、出ないという仲となりかねません。誰よりも大事な人を失うことになりかねません。
これは、私の「いなべんの哲学」、「人生は、いまの一瞬を、まわりの人といっしょに、楽しみ尽くすのみ」に反します。そのような大切な人を憎むようなことは、絶対にさせたくありません。
これをお読み下さっている皆様はもちろん、身のまわりの方で、相続問題でお悩みの方がおられましたら、ご一報下さい。必ずお役に立つ話ができるはずです。=この項終わり
(みのる法律事務所だより「的外」第351号一部引用)
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