司法ウオッチ<開かれた司法と市民のための言論サイト>



 〈知恵のサービスを提供して稼げる理想〉

 20代で地方弁護士となり、30年間喧嘩犬に明け暮れ、10年間の闘病生活を送り、余命宣告を受け、死を現実のものとして意識し、「人生は、いまの一瞬を、まわりの人といっしょに、楽しみ尽くすのみ」という「いなべんの哲学」を確立した。

 その結果、地方弁護士は喧嘩犬で終わることはできないという思いが湧き、そのような視点で地方弁護士の役割を考えるようになった。地方弁護士は、生きる上での知恵と、人を思う優しさが不可欠であるという思いに至った。

 そのような目で物事を見るようになったら、自分も知恵者を求めているが、地方住民も知恵者を求めていることが分かるようになった。地方弁護士も地方住民も互いに知恵者を求めている。それはどちらも人間であり、根本は同じだから当然である。

 自分もそうだが、誰だって生き方を教えてくれる知恵者が欲しいはずだ。その点においては、地方弁護士と地方住民は一緒なのだ。一緒に悩み、一緒に考えなければならない。それが寄り添うということではなかろうか。地方住民は、地方弁護士にそういう存在になってほしいのではないか、と思うようになっている。

 地方弁護士が、知恵者となって地方住民に知恵のサービスを提供し、カネを稼げるようになれば、地方弁護士の役割と在り方としては理想的である。それができれば、地方弁護士の仕事は大幅に広がる。仕事の深みも増す。地方弁護士の商売は、長く繁盛することになる。

 地方弁護士の商売という視点でも、社会的使命という視点でも、地方弁護士は法的知識を切り売りするに止まらず、人生はどう生きるべきかという生き方を地方住民と一緒に考え、一緒に泣き、一緒に笑って、地方住民にとって、必要不可欠な存在となり、それに見合うカネを稼げる知恵者となりたい。

 地方弁護士の商売を繁盛させるためには、地方弁護士は法律の条文と、判例と、法理論の知識を切り売りするだけではなく、地方住民の日常に深く関わって、地方住民の普段の悩みを解決してやる知恵を提供するサービス業とならなければならない。

 地方弁護士は、地方住民と共に泣き、笑い、悩みを解決する仕事をすることによって、その商売を繁盛させるために専門馬鹿から知恵者に変身しなければならない。そうなるためには、地方弁護士は何より相談してくる地方住民と一緒に悩み事を解決しようとする、相談者に寄り添う優しさ、つまり人を思う心が不可欠となる。


 〈法律的紛争という狭い範囲を超えて〉

 これまで紛争が発生し、悩み悩んだ末にこの紛争から解放されたいとの思いから、法的に決着を付け、その後は紛争の相手方との関係修復など望まないなどと考えるクライアントより、カネを貰って商売をしてきた。

 裁判で法的に白黒つけ、その後は親子関係も、兄弟関係も断絶したいというクライアントの代理人となって闘うため、法的知識を使ってきた。紛争が深刻化し、関係修復など考えられなくなった事件を担当してきた。

 地方弁護士に事件を依頼する地方住民が、地方弁護士に求めるのは、そのようなものがほとんどであり、地方弁護士もそれに応えることによって、商売をしてきた。地方弁護士の商売は、それが主な仕事だった。今でも、そういう状況は続いている。

 しかし、そのような仕事を取り扱うだけでは、地方弁護士の仕事は減り、収入も減るという現実に直面している。地方弁護士の仕事を根本的に見直さなければならない状況となっている。

 地方弁護士の商売を繁盛させるためには、裁判事件において、どうしたら勝てるという法的知識を切り売りするだけのような仕事から、地方住民の日常生活において、普段から発生する悩み事全般に、生き方という知恵を提供することを商売としなければならないと思うようになっている。

 知識だけにとどまらないで、知恵を提供することは、法律的紛争という狭い範囲に限定しないで、日常生活全般に関わる仕事ができ、地方弁護士が地方住民にとって、必要不可欠な存在となり、仕事の場も広がり深まる。地方弁護士の商売を繁盛させるためには、やらなければならないことだと確信する。地方弁護士は、専門馬鹿から知恵者にならなければならない。

 (拙著「地方弁護士の役割と在り方」『第1巻 地方弁護士の商売――必要悪から必要不可欠な存在へ――』から一部抜粋)

 「地方弁護士の役割と在り方」『第1巻 地方弁護士の商売――必要悪から必要不可欠な存在へ――』『第2巻 地方弁護士の社会的使命――人命と人権を擁護する――』『第3巻 地方弁護士の心の持ち方――知恵と統合を』(いずれも本体1500円+税)、「福島原発事故と老人の死――損害賠償請求事件記録」(本体1000円+税)、都会の弁護士と田舎弁護士~破天荒弁護士といなべん」(本体2000円+税)、 「田舎弁護士の大衆法律学 新・憲法のこころ第30巻『戦争の放棄(その26) 安全保障問題」(本体500円+税)、「いなべんの哲学」第1~16巻(本体1000円+税、13巻のみ本体500円+税)も発売中!
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