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 〈戦争をしないために創られた日本国憲法〉

 今更という感もあるが、この項では日本国憲法の前文をもう一度見直したい。地方弁護士の社会的使命として、日本国憲法を地方住民により分かりやすく知らせたい。地方弁護士の社会的使命として、日本国憲法の真髄部分を一般大衆に分かりやすく知らせたい。

 先に述べた憲法改正委員会委員・芦田均氏の名演説に憲法改正の動機の大切な部分は述べられている。その演説は、昭和21(1946)年7月9日にあったが、それから約4カ月後の同年11月3日に日本国憲法は国民に知らされた。11月3日は文化の日となった。

 その憲法の前文には、どのような理由で新憲法が創られたかが明確に示されている。それを一読すれば、芦田氏の前記憲法改正の動機に示されている内容が盛り込まれていることがすぐ分かる。更には、憲法9条に戦争放棄の規定を挙げた理由がすぐ分かる。

 78年も経った今日、今更という感はあるが、こういう機会がなければ見直したりすることなどない。憲法前文のうち、特に憲法改正の動機と憲法9条を掲げた理由に関する部分を抜粋する。こういうことをすることが、地方弁護士の社会的使命を実践するための具体的行動の一つであると確信する。

 憲法の前文には、「政府の行為によって再び戦争の惨禍が起こることのないやうにすることを決意し、ここに主権が国民に存することを宣言し、この憲法を確定する」とある。

 日本国憲法は、再び戦争をすることのないようにするために創ったものであることを前文はストレートに明らかにした。再び戦争が起こることがないようにするために日本国憲法は創られたものであり、戦争が出来るように改定したら、この憲法ではなくなる。そんなことをしたら、日本国憲法の改定ではなく、日本国憲法の否定である。

 こんなことは日本国民なら誰でも知っているはずであると思うが、念には念を入れたい。この事を忘れないで、人命と人権に関わることと、戦争に関わることについては、いつも心から離れないようにしておかなければならない。日本国民なら憲法の前文を忘れてはならない。

 だが、憲法の前文をしっかり読んでいる国民はどれほどいるのであろうか。国民の50%以上は4年制大学を出ているとのことだが、日本国憲法の前文を丁寧に読んでいる国民は、それほど多くはないような気がする。学校の先生でも、それほど多くはいないように思えるが如何であろうか。

 地方弁護士の役割の一つとして、そのような地方住民に対し、日本国憲法を知らせることがあると確信している。地方において、それができるのは弁護士だと思う。そういう思いで、憲法の駄弁本を書いて地方住民に発信している。幸い、地方住民の中にも、地方弁護士の中にも、駄弁本に共鳴してくれる人もいて、駄弁本を自分が主催する勉強会の教本にしてくれる地方弁護士もいて、望外の喜びとなっていることもある。


 〈地方弁護士の基本的、根本的社会的使命〉

 日本国憲法の前文を読めば、前記芦田均憲法改正委員長の憲法改正の動機で述べられたことが取り入れられていることが分かる。日本国憲法は、二度と戦争をしないために創られたものであることは、この前文が示している。地方弁護士は、地方住人に対し、二度と戦争はしないという目的で創られた日本国憲法の存在と、その内容を教え広める社会的使命がある。具体的には、憲法改正の動機、憲法の前文、9条の戦争放棄の規定を、国民に、地方住民に教え広める任務がある。それが地方弁護士の基本的、根本的社会的使命であると確信している。

 これまでこのことを何度語り、何度書いたか分からないほど、語り書いたが、まだまだ語り足りないし、書き足りない。下手な鉄砲も数撃ちゃ当たるだ。数多く語り、書き続けるだけである。機会がある度に語り、書きたい。

 日本国憲法が改正されてから78年間が経過した。この間、日本国憲法は一度も改正されなかった。日本国憲法ができた背景や日本国憲法が果たしてきた平和の有難さを知らない年代の政治家や国民に対し、日本国憲法が出来た背景やその効果を知らせるのは、年老いた弁護士の社会的使命であると確信している。

 地方弁護士も弁護士である以上、この社会的使命は当然にある。地方弁護士の基本的、根本的社会的使命は、地方住民に日本国憲法の戦争放棄の規定の存在と、その効果につて決して忘れることのないように発信し続けることにある。

 弁護士の社会的使命は、「人命と人権を守るために、戦争に反対する」ことにあると確信する身としては、地方弁護士となった以上、前記憲法改正の動機の芦氏の演説と、憲法の前文と、憲法9条の心は、手を変え品を変え、地方住民に知らせたい。

 心ある弁護士と、心あるメディアと、心ある地方住民と一緒に、その社会的使命を果たし続けたい。幸い、心ある地方弁護士と、心ある地方紙と、心ある多くの地方住民と、人命と人権という究極の価値を守るために、戦争絶対反対という考えで一致し、歩みを一緒にできてきたことに心底より嬉しく、感謝している。

 司法関係に関する情報を発信し続けておられる河野真樹氏の、この「司法ウオッチ」には、平成29(2017)年6月から今日まで「田舎弁護士の大衆法律学」シリーズを休みなく取り上げてもらっている。「田舎弁護士の大衆法律学」の中でも「戦争の放棄」シリーズは1巻から25巻までを発信してもらった。その中で、憲法前文を取り上げてもらったことも少なくない。

 日本国憲法の前文は、日本国民なら知っているのが当たり前だ。半分以上が4年制大学を出ている知的レベルの高い日本国民なら日本国憲法の前文は、よく理解しているのが当然と思われる。だが、現実は違う。拳法の前文さえ知らない国民が少なくない。きしてや芦田均氏の憲法改正の動機の演説内容など知っている方が少ない。弁護士、従って地方弁護士も憲法改正の動機、憲法の前文、憲法9条の心を、国民、地方住民という一般大衆に説き広め、それを守るように勧める役割を果たす伝道師とならなければならない。

 少なくとも私はそれが地方弁護士の使命であり、自分の社会的使命だと固く信じている。

 (拙著「地方弁護士の役割と在り方」『第2巻 地方弁護士の社会的使命――人命と人権を擁護する――』から一部抜粋)


「地方弁護士の役割と在り方」『第1巻 地方弁護士の商売――必要悪から必要不可欠な存在へ――』『第2巻 地方弁護士の社会的使命――人命と人権を擁護する――』『第3巻 地方弁護士の心の持ち方――知恵と統合を』(いずれも本体1500円+税)、「福島原発事故と老人の死――損害賠償請求事件記録」(本体1000円+税)、都会の弁護士と田舎弁護士~破天荒弁護士といなべん」(本体2000円+税)、 「田舎弁護士の大衆法律学 新・憲法のこころ第30巻『戦争の放棄(その26) 安全保障問題」(本体500円+税)、「いなべんの哲学」第1~16巻(本体1000円+税、13巻のみ本体500円+税)も発売中!
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