司法ウオッチ<開かれた司法と市民のための言論サイト>




 〈被相続人が生きているうちの話し合いの大事さ〉

 私は、平成22(2010)年10月31日に、「田舎弁護士の大衆法律学」シリーズとして、「相続の巻(上)――火種・足枷」を、平成26(2014)年9月26日に、「相続の巻(下)――伝家の宝刀」を発刊しました。そのいずれの本においても、相続問題は法律や裁判を頼るよりは、相続に関係する人たちの話し合いでの解決が大事であることを強調しました。

 上巻では、被相続人(遺産を残す人)が生きているうちに、相続人(遺産を残される人)との間で十分に話し合っておくことが大事であると述べました。下巻では、被相続人が亡くなった後には、相続人間の気持ちの歩み寄りの大切さを強調しました。

 相続問題に対する考え方は、被相続人の生存中から、残す人と残される人が普段から生き方の問題として話し合っておくことが大事です。被相続人が亡くなったら遺産を残された人同士の話し合いが大事であることも強く述べました。いすれにおいても、話し合いが大事だということは、気持ちが大事であり、関係者の気持ちを一つにしていかなければならないということを述べたつもりです。

 ここでは、遺産を残す人が生きているうちに、遺産を残される人との間で話し合いを尽くしておくことと、その話し合いの内容が大事であるということを、もう一度述べてみます。

 相続に関係する全員の気持ちが、大事なのです。相続に関係する皆の気持ちを一つにするためには、残す人が生きているうちに、残す人と、いずれ相続に関係するであろう人との間で話し合いをしておくことが大事です。

 「人生は、いまの一瞬を、まわりの人といっしょに、楽しみ尽くすのみ」という生き方を実現するためには、被相続人が生きているうちに、相続に関係するする人の気持ちを一つにしておくこと。「楽しく生きるための相続」を実現するためには、残す人は生きているうちに、相続関係者全員の気持ちが同一方向を向くようにしておくことが大事なのです。


 〈子育てという問題〉

 そのためには、子どもが小さいころから、親子、兄弟などの心が一つになるような生き方をするように育てることが大事であることは間違いありません。

 親は子どもをどのように育てたら、そのような子どもに育てられるかという問題になりますが、ここのところは、これが絶対という方法は語れません。ただ思いやりのある人間に育つように、と願いながら、心の交流を図りながら、親子、兄弟がいっしょに毎日の生活を積み重ねることとしか言いようがありません。普段から、そう願って生きていくだけです。

 ここは、遺産に関する法律論というよりは、親と子、兄弟同士は、どういう生き方をすればよいかということが中心となりますので、子育てに関する話とも言えますが、親と子は互いにどのように生きたら、「人生は、いまの一瞬を、まわりの人といっしょに、楽しみ尽くすのみ」という「いなべんの哲学」を実現できるか、という視点で考えてみるべきです。

 そして、それを考えて行動することが、「いなべんの哲学」の実践なのです。相続問題の解決は、「いなべんの哲学」の実践の一つであり、同哲学の延長線上にあるのです。

 (拙著「いなべんの哲学 第6巻 」から一部抜粋)


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