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 〈「代言人」としての弁護士の役割〉

 弁護士の古い呼び方は、「代言人」であった。法廷などで、本人に代わって意見や言い分を述べることを仕事とするからである。司法書士を「代書人」と呼ぶのと同じで、その作業内容がストレートに表現されていて、弁護士より分かりやすい。

 この役割は、昔から弁護士の役割の代表的なものであり、今でもそれが弁護士の主な役割だと一般的には認識されている。地方弁護士は、法廷に限らず多くの場において、地方住民の代言人となることが、その社会的使命の主な部分であることは今も変わらない。

 もちろん本人に代わって述べると言っても、通訳やメッセンジャー(伝言を届ける者)とは違う。本人に代わって意見や言い分を主張してやる立場であり、本人の言っている言葉をそのまま他人に伝えるものではない。代わって意見や主張を言うこともできる立場にある。本人が言いたくとも十分に言い尽くせないことや、考え付かないことを深めてやったり、表現してやったりして、本人の言いたい真意を十分に伝わるように考え、まとめて言ってやることが弁護士の役割である。

 地方弁護士は、これまで法廷において、依頼者の代理人として、依頼者の主張を代わって主張してやることを主な仕事としてきた。しかし、これからの地方弁護士は法廷だけではなく、あらゆる場において地方住民の意見や言い分を、地方住民に代わって言ってやることをその社会的使命としなければならない。政治の場において、大衆運動の場において、出版、放送などの場において、講演の場などにおいて、法廷や裁判所に限らず、あらゆる場において、地方住民の代言人とならなければならない。

 国民や地方住民の中には、人命と人権を守るために、国家機関や地方機関や国民や地方住民や世間や大衆に向かって、言いたい意見を持っている人は大勢いる。しかし一般の国民や地方住民には、それを発表する場は少ない。まだ発表することに慣れてはいない。その能力が不足している場合もある。地方弁護士は、そのような地方住民の人命と人権を守るための意見や主張を、あらゆる場において、代言してやる役割がある。時には声なき声を代言してやらなければならない社会的使命がある。

 地方弁護士は、法廷に立ち、依頼者の代理人として依頼者の意見や言い分を代わって述べることを主な仕事としてきた。変わって述べることは本来の仕事であり、慣れている。これからも地方弁護士は地方住民に代わって、法廷だけに限らないで、あらゆる場において地方住民の人命と人権を守るための意見や主張を述べる代言にとならなければならない。これは地方弁護士の商売でねあるが、社会的役割でもある。ここでは商売という面より、地方弁護士の社会的使命という面に着目し、代言人としての役割について述べたい。


 〈社会的使命としての代言人的役割〉

 地方弁護士の代言人的任務は、地方弁護士の商売という面においても、地方弁護士の社会的使命という面においてもある。弁護士という制度が出来た当時から、それが弁護士の仕事として今まで続いている。

 これまでは、弁護士は依頼者からカネを貰い、法廷で依頼種に代わって意見や言い分を述べることを商売としてやってきたもので、それが代言人という地方弁護士に対する古典的なイメージであった。地方では未だに、地方弁護士は法廷で本人に代わって意見や言い分を述べる職業人というイメージが強い。地方弁護士自身も、そういう認識の者が多い。

 しかし、このシリーズで「地方住民の代言人となりたい」と言うのは、個人と個人の争いの一方当事者の代理人となって、法廷で一方当事者の意見や言い分を代わって述べるという意味でのこれまでの代言人ではない。商売という面における代言人ではない。

 地方弁護士の社会的使命という面において、地方住民の代言人になりたいのであり、地方住民の人命と人権を守るために、地方住民に代わって国家機関や地方機関に対し、国民主権国家の国民に代わって、意見や言い分を述べなければならないと言いたいのである。それは法廷に限らず、あらゆる場においてしなければならない弁護士の社会的使命であると言いたいのである。

 地方弁護士の商売に関する問題ではなく、地方弁護士の社会的使命に関する問題は、人命と人権を擁護するということであり、この場合は「代言人」という呼び名より、「弁護士」という呼び名が相応しい気もする。しかし、地方住民に代わって言ってやるという意味では、やはり「代言人」は分かりやすく、それなりに相応しい呼び方であるような気もする。

 地方弁護士の商売面における代言人的役割と、地方弁護士の社会的使命面における代言人的役割とは、密接不可分の関係ではあるが、ここでは分けて述べる。この項では、地方住民の人命と人権を守るために、地方弁護士には地方住民に代わって言わなければならない社会的使命があることを強調したい。地方弁護士には、商売として依頼者に代わって言うだけではなく、社会的使命を果たすために地方住民に代わって言わなければならないという役割があることを述べたい。

 (拙著「地方弁護士の役割と在り方」『第2巻 地方弁護士の社会的使命――人命と人権を擁護する――』から一部抜粋)


 「地方弁護士の役割と在り方」『第1巻 地方弁護士の商売――必要悪から必要不可欠な存在へ――』『第2巻 地方弁護士の社会的使命――人命と人権を擁護する――』『第3巻 地方弁護士の心の持ち方――知恵と統合を』(いずれも本体1500円+税)、「福島原発事故と老人の死――損害賠償請求事件記録」(本体1000円+税)、都会の弁護士と田舎弁護士~破天荒弁護士といなべん」(本体2000円+税)、 「田舎弁護士の大衆法律学 新・憲法のこころ第30巻『戦争の放棄(その26) 安全保障問題」(本体500円+税)、「いなべんの哲学」第1~24巻(本体1000円+税、13巻のみ本体500円+税)も発売中!
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