司法ウオッチ<開かれた司法と市民のための言論サイト>




 

 〈胸は張れない法律による相続問題解決〉

 「人を殺してはならない」などという法律があろうとなかろうと、人を殺してはならないということは当たり前のことです。親が残した遺産を裁判所に法律の定めた法定相続分に従って分割してもらうまで、親族間で話し合いがつかなかったのに、「法に従った」と胸を張るのは、「人を殺していない」から立派だと胸を張るレベルのような気がします。

 法律が国民に守るように求めているのは、社会秩序を保つために必要な最低レベルのモラルです。集団生活を送るには、この程度のことは最低限守ってほしいというレベルのものです。法律のきまりに従っていれば立派な生き方だなどとは、到底言えないのです。

 ここのところを誤解している人がよく見られます。「法定相続分に従っているから立派だ」とか、「遺留分権という法が認めている権利を主張したのだから立派だ」などという人です。法律によらなければ自分の行動ができないなどという人は、情けない人と言わざるを得ません。人情がなく、思い遣りのない人と言わざるを得ません。

 法律の規定に頼らなければならない生き方など、立派などとは言えません。法律などに任せないで、自分の気持ちでお互いに「楽しく生きるための相続」を実現しなければならないのです。

 相続に関係する人皆が、幸せになれるような生き方を選ばなければならないのです。相続では、関係する人皆のおかげで、ここまで生きて来られたことを互いに感謝し、忘れてはならないのです。そして、関係する人皆の幸せを願って、相続問題を解決しなければならないのです。

 普段、皆さんは法律の規定を意識して生活しているでしょうか。裁判官や弁護士なら、仕事柄法律は頭から離れませんが、そうでない人は日常生活の中で、法律を意識しないで生きています。法律など意識しなくとも、まわりの人といっしょに楽しく生きています。

 法律などより、もっと高いレベルのモラルをもって生きています。人としてこうでなければいけないと考えられる生き方の原則である倫理だったり、道徳だったり、哲学や宗教だったり、常識を持って生きています。法律の規定を意識して生きることは、日常生活を送ることはほとんどありません。法律を意識して普段生活している一般人は、詐欺師のような輩ではないでしょうか。


 〈物欲のコントロール〉

 どうして相続問題となったら、法律を意識するのでしょうか。いつものように法律など意識しないで、普段のモラルで相続問題も解決できないのでしょうか。いつもの、法律より高いレベルのモラルや人情で生きたいものです。遺産相続問題を法律に従って解決しようと考えるのは、欲が絡むからです。目の前の遺産を見せられ、欲に目が眩み、倫理や道徳など忘れ、人情も忘れ、人格さえも忘れてしまうからです。

 誰にでも欲はあります。欲自体を否定するつもりはありません。相続問題で骨肉相食む争いとなるのは、欲のコントロールができないからです。物欲という欲が、人格的に高いレベルで生きたいという人格欲を制圧してしまうからです。人間はいつも欲望をコントロールしながら生きていますが、法律などの法定相続分や遺留分の規定を知り、物欲に格欲が押さえつけられてしまうのです。

 相続問題も、物欲をコントロールすれば、いつもと同じように法律のきまりなど気にしないで、人情と法律が規定するより高いレベルの普段のモラルで解決できるはずです。いつもは、自分の気持ちで行動を決めています。いつものように自分の気持ちを大事にして、法定相続分とか遺留分などという法律の規定を無視すれば、平穏な日常となるのです。

 相続問題だって、いつものように自分の気持ちとまわりの人の気持ちとをうまく調整して決めれば、法律や裁判所の世話にならなければならないことなどないはずです。これまでと同じように親族関係の絆を保てるし、あるいはより強い絆にできるのです。

 相続問題に限って、法律という最低限のレベルのモラルまで下げて解決することは、百害あっても一利もないのです。

 (拙著「いなべんの哲学 第6巻 」から一部抜粋)


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