司法ウオッチ<開かれた司法と市民のための言論サイト>

 
 正義という言葉、概念とその内容については、ウイッキペデイアに詳述されている。プラトン、アリストテレスからカント、ロールズに至るまでの正義論も要領よく紹介されている。弁護士会の機関誌の見出しは「自由と正義」で、法律家の使命は確かに「自由と正義」にあると思われるが、しかし私は、この「正義」という言葉に何とも胡散臭いものを感じてしまうのだ。

 弁護士界の弁護士人数論などは、この「自由と正義」の使命感中にどのような位置を占めているのであろうか。「正義」という言葉と、「善」とか「人間愛」とかという言葉は必ずしも重なり合うわけではない。「人間愛」のない「正義」はあるし、「正義」という言葉をふりかざす悪人もいる。むしろ多いかも知れない。「正義」という原理は、どうやら秩序、規制と深い関係があるようだ。

 人間集団の秩序は規制によって実現され、その実行を担保するものは暴力である。「正義」を振りかざす人間に感ずる胡散臭さは、この背後に控えている暴力と抑圧を感じてしまうからなのだろう。石原真太郎氏には「正義」という言葉が良く似合うと思うが、それは「太陽の季節」以来の暴力の匂いが、未だに体や表情に漂っているように見えるからなのかも知れない。

 ダイアモンド社のビジネス情報サイト「ダイアモンド オンライン」に「弁護士界の憂鬱 バブルと改革に揺れた10年」という連載記事が掲載されている。冒頭、「北陸富山回転寿司かいおう保木間店」が紹介される。この店は債務整理で著名な、かの弁護士法人アデイーレの代表者、石丸弁護士所有の店である。この店につき「『過払いで一発当てた後は、回転寿司――。いったい、石丸さんは何を考えているのか――』。この寿司店の存在を知った弁護士達は、必ずといっていいほど首を傾げた」という。

 何を考えているのか?石丸弁護士は回転寿司ビジネス進出について記者に説明する。「今、弁護士界全体のマーケットで、過半数が債務整理関連だ。つまり、極端なことを言えば、債務整理案件がそっくりなくなったら、半数の弁護士事務所が破綻するということだ。もちろん、過払い案件がなくなったら、どうするかというのも考えている。弁護士の数が増えているので、今までのように弁護士法人を経営して行くことは難しくなる。もちろん、その中で勝ち残っていく努力をするのだが、そうはいってもリスクヘッジをして行かなくてはならない」それで回転寿司業界に進出したのだという。

 海外展開も考えているそうだ。進出先は「ベトナムは有望だ。中国だったら大連。まだ決まっていないが、狙っている」と威勢が良い。ダイアモンド オンライン編集部 片田江記者は言う。「過払い金返還請求は、消費者金融業界を瀕死の状況にさせたが、弁護士界を潤した。過払いバブルは弁護士界の常識や弁護士自身の倫理観をも変えさせた。

 そのバブルがはじけた今、弁護士界では次なるメシのタネを探す動きが活発になる一方で、若手弁護士が育たず、非弁提携がはびこるような混沌とした状況となっている」。

 弁護士界全体のマーケットで、過半数が債務整理関連となっているという石丸氏の発言には驚いた。1990年代中ごろから私は法律新聞の司法書士界版で「縦横無尽シリーズ」として、毎週、司法書士、弁護士の広告規制、価格競争規制、人員規制撤廃と弁護士増員、司法書士の簡裁訴訟代理権付与につき読者に訴え続けていた。その結果、「弁護士界全体のマーケットで、過半数が債務整理関連となっている」ことになり、石丸弁護士の回転寿司業界進出になるとは、何とも感慨深いというかしみじみとすらして来るのである。



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