司法ウオッチ<開かれた司法と市民のための言論サイト>

■勝瑞豊
司法書士界の論客として知られる筆者が、特異な「日本司法」と、そこにいる人間たちの生態を探ります。
1944年7月13日生まれ。1988年司法書士登録(東京司法書士会)。2003年認定司法書士。東京司法書士会理事、同会綱紀委員などを歴任。現在、同会法律相談員を務める。著書に「『超』済出発–自己破産免責完全ガイド」(東林出版社)など。
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 終末、何の終末なのか、命の終わりというわけではない。しかし、今、何かが終わりを迎えているという気がする。その何か、それは巨大なものだ。世界を飲み込んで来た巨大な時代の流れがゆっくりと、しかも日々確実に終わりつつある。それが何かということは言えないが、それが実在していることは明らかだ。フランス革命、アメリカ独立戦争に始まる近代という時代の法を忠実に学んできたのが、日本の法律家達だった。

 ところが、今では、立憲民主制と近代法、そして国家という制度そのものも輝きを失いつつあるように見える。2033年、20年後、私は89歳となる。その時は死んでいるだろうか。現在、私は69歳になるが、そのことが未だに信じられないでいる。実感としては50歳という感じだ。このまま行けば20年後には未だ生きているだろう。それまでの20年間、私はそこで一体何を見ることになるのだろう。

 第3次世界大戦、核ミサイルが飛び交う最終戦もないとは言えないように思える。国家間の格差と主権国家間の無政府状態が続く限り危機は去らないのだ。

  「今時、強欲は流行らない。世は共感の時代を迎えた・・・庶民のお金をギャンブルに注ぎこみ、一握りの幸運な人を富ませ、その他の人は一顧だにしない巨大なカジノの悪夢・・この悪夢を招いたのは・・アメリカのレーガン大統領とイギリスのサッチャー首相が導入した『トリクルダウン』経済」だったと動物行動学者、フランス・ドウ・ヴァール氏は言う(「共感の時代へ」紀伊国屋書店)。

 ヴァール氏は、チンパンジー達の生態を観察しながら「私はイマヌエル・カントのことをあらためて考えて見ざるを得なかった。・・人間にとって新しくて重要だと考えられていること、すなわち抽象的な思考や良心や道徳の虜になって、私たちは基本をおろそかにしている。・・・文明の頂にばかり注目する代わりに、麓の丘陵地帯にも注意を払う必要がある」と論じる(「共感の時代へ」紀伊国屋書店 30P)。

 私もそう思う。もっともらしい論文の山に埋め尽くされていては、文明の真相は見えない。特に西洋の書物から世界を見ていては、我々日本人のことすら見えなくなってしまうのではないかと思う。巨大なインドやかってのオスマン帝国のトルコのことなど、私もそうだが日本人で知る人は少ない。当然に日本人は、イスラム世界のことを知ろうとも理解しようともしないのである。



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