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 〈取引停止・不利益論の非合理性〉

  (以下、上告理由書引用の続き)

 (3)原審判決の違法、最高裁平成17年7月19日第3小法廷判決(取引履歴開示請求事件)違反

 原審は、判決書7ページで、「消費者金融業者の中には、消費者から取引履歴の開示請求があった場合には、取引の内容を確定させる必要から取引を停止する扱いをしている者があることが認められ、これが取引の継続を望んでいた消費者にとって不利益なことは明らかである。この点について控訴人は、そのような取引停止は違法であるとの見解を有しているようであるが、少なくとも消費者をそのような紛争に巻き込むこと自体が不適当であることは否定できない」として、貸金業法19条2の権利行使は、債権者からの違法な妨害が予想されるから、債務者を「そのような紛争に巻き込むこと自体が不適当である」として、債務者の当然の権利の行使を控えさせるというとんでもない意見を述べて、上告人の債権者の取り引き開示請求に対する報復的な取引停止措置は違法という主張について否定している。貸金業法19条2の規定は、最高裁平成17年7月19日第3小法廷判決を受けて、平成18年法律第115号による改正の際に本判決を踏まえて、債務者等は、業務帳簿の閲覧又は謄写を請求することが出来る旨の条文、19条の2が新設されたのである。その判決の一部をここに援用する。

 「一般に、債務者は、債務内容を正確に把握できない場合には、弁済計画を立てることが困難となったり、過払い金があるのにその返還を請求できないばかりか、更に弁済を求められてこれに応ずることを余儀なくされるなど、大きな不利益を被る可能性があるのに対して、貸金業者が保存している業務帳簿に基づいて債務内容を開示することは容易であり貸金業者に特段の負担は生じないことにかんがみると、貸金業者は、債務者から取引履歴の開示を求められた場合には、その開示要求が濫用にわたると認められるなど特段の事情のない限り、貸金業法の適用を受ける金銭消費貸借契約の付随義務として、信義則上、保存している業務帳簿(保温期間を経過して保存しているものを含む。)に基づいて取引履歴を開示すべき義務を負うものと解すべきである。

 そして、貸金業者がこの義務に違反して取引履歴の開示を拒絶したときは、その行為は、違法性を有し、不法行為を構成するものというべきである。

 上告人は、・・弁護士を通じて、半年近く、繰り返し取引履歴の開示を求めたが、被上告人がこれを拒絶し続けたので、上告人は、その間債務整理が出来ず、結局、本件訴訟を提起するに至ったというのであるから、被上告人の上記開示拒絶行為は違法性を有し、これによって上告人が被った精神的損害については、過払い金返還請求が認められることにより損害がてん補される関係には立たず、不法行為による損害賠償が認められなければならない。・・」

 以上であるが、貸金業法19条2の請求に対して、それの見返りとして請求した債務者に対し、取引停止で迎えるということであればそれは貸金業法上の処分のほかに、業者は債務者より損害賠償を請求されることになる。債務者「消費者をそのような紛争に巻き込むこと自体が不適法である」のか。不適法なのはどちらだろう。

 原審判決書8ページで、さらに「消費者金融業者の中には、消費者から取引履歴の開示請求があった場合には、取引の内容を確定させる必要から取引を停止する扱いをしている者がある」とも判示するが、それは本件注意勧告がなされる以前、10年前頃の事であって、業者は上記判決も知っているので、当時でも金融庁に通報すればすぐに取引は再開された。であるから、そうしたばかげたことをする業者は今はいない。続けて原審判決は「控訴人が、消費者に対し開示請求をしただけでも取引を停止される場合があることを説明し、それを承知の上で受任したような事情は見当たらないから、控訴人の上記主張には合理性がないといわざるを得ない」と判示するが、勧誘用チラシ(甲31-2)の中段には、「業者の中には取引履歴取り寄せに反発し、貸付停止する者が稀にいますが、それは違法ですので、当方にすぐにご通知ください。直ちに金融庁に通報し取引を再開させます。」という注意書きを記載している。

 判決8ページにはその他にも「残高調査業務が独立して行えないとしても司法書士に格別の不都合があるとは解されない」とか上告人の「職務の便宜のために、消費者に上記のような不利益(取引停止)をもたらす可能性のある残高調査業務を独立して行う必要があるというに等しく、到底合理性を有するものではない」などと、上記、取引履歴請求義務最高裁を読めば、全くそれが合理性のない判示であることは明々白々である。


(4)原審の、司法書士のする広告についての憲法21条1項違反

 判決9~10ページで、被上告人の広告規範規則についての意見が論じられているが、その論旨はいずれも抽象的で具体性を欠き、それに対する反論は、すでに繰り返し述べているので省略する。

 原審判決は、その10ページで 本件注意勧告は、国民に事件漁りとの印象を与え、国民に不快感を与えるような態様の広告を禁止することにより、司法書士としての品位を保持しようとするものであり、また、広告内容や方法を具体的に示して禁止するものであることから広汎な規制を加えるものとは言えないと判示するが、

 その注意勧告とは

「消費者金融会社の敷地内やこれに近接する場所で利用者を待ち受けて声をかけチラシを配布するなどして、過払金返還請求事件や債務整理事件の勧誘をしないこと」というものであった。

 上告人のしていた広告は

債務者の取引履歴の代理取り寄せと、利息制限法に基づいた残高再調査再計算業務提供をする」というものであった。=この項終わり



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