司法ウオッチ<開かれた司法と市民のための言論サイト>

 

 この10月から、家事調停官に任官することになった。いわゆるパートタイム裁判官である。任期は2年、1回は更新する見込みなので、今後、大過なければ、4年間は2足のわらじを履くことになる。最近は仕事が減っているので、週1回なら事務所を空けても何とかなるだろうと思っているのだが、さてどうなることか。

 
 まだ、登庁したのは2回だけなので、右も左も分からない状態だが、任官以前に思っていたよりも、実に充実した経験になりそうだ。調停官なので、ひょっとしたら、暇をもてあますことになりかねないのだろうかとやや心配していたのだが、これは全くの誤解だった。

 
 弁護士任官は、なるべく、弁護士として当事者側にいた特性を生かして行きたいという思いがあり、裁判所からも、キャリア裁判官とは違い、個々の調停にできるだけ立ち会ってほしいという希望があるようだ。このため、午前も午後も、これはという事件に最初から立ち会いながら、調停の成立、不成立のために呼び出しがかかると、押っ取り刀でそちらの調停室に向かうことになる。呼び出しが重なることも多いようで、ボーッとする暇もない。あんまり暇なら、何か内職でもするかと覚悟していたのだが、そんな必要もなさそうだ。

 
 弁護士をしていると、どうしても、事件は自分の依頼者の側からしか見ることができない。意識して、相手方の視線から見直すべきだと思うことも多いのだが、やはり限界がある。調停官として事件に携わってみると、ああ、裁判官は、事件をこういう目で見ているのだ、ということがリアルに分かって、実に刺激的であった。

 
 弁護士任官は、一連の司法改革の中で、数少ない、有意義な制度だろうと思う。さすがに、現時点では、フルタイムの任官をするところまで、決心はできていないが、それも悪くないかも知れない、と思い始めている自分に驚くばかりだ



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