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 平成23年現在で、我が国には約2600人の検察官がいる。しかし、このうち、司法試験を受かってきたいわゆる正検事は1800人。残りの約800人は、副検事だ。

 副検事は、一般に、検察事務官から法務省の内部試験に合格した者が任命される(受けたという人の話は聞いたことがないが、司法試験合格者にも、この試験の受験資格がある)。また、副検事の中には、さらに内部試験を受けて特任検事になる人もいる。

 副検事は、区検察庁に配属される原則だが、実際には、検察官事務取扱副検事として、地裁の事件にも深く関与しているのが現状だ(区検の事件の多くは検察官事務取扱事務官、つまり、検察事務官のベテランが担っている。)。小さな支部では、もともと支部長以外の正検事が配属されていないところも多く、我が国の刑事裁判は、根本の部分で副検事に支えられているところが大きいのだ。神奈川でも、横須賀支部は、管内人口60万人を数える大支部だが、正検事は支部長の他1人しかいない。横須賀では、刑事事件で正検事にお目にかかる機会は滅多にないのだ。

 自分が正検事をしていたときは、副検事さんは、年齢的にも検察庁でのキャリア的にも、ずっと上の人ばかりで、新任検事にはおっかないことこの上なかった刑事部長や副部長たちも、彼らの扱いにはとても気を遣っている印象だった。普段強面の副部長が、宴会では年配の副検事に酌をし、副検事に肩を叩かれていたりしているのだ。キャリアがノンキャリに気を遣っているわけで、この辺の構図は他の省庁と変わりはない。

 副検事と正面から対峙するようになったのは弁護士になってからで、最初は非常にやりにくかったことを覚えている。全体に、有能でまじめな方が多いのだが、どうも感覚が違うのだ。研修所を出ていれば、刑事訴訟法を刑事弁護の視点からも学ぶわけだし、民事の知識も多少は身についている。そうした法感覚の共通性を感じることのできる副検事は非常に少なかった。映画「それでもぼくはやってない」でも、副検事が居丈高に起訴を宣言するシーンがあったが、実際、何でこう融通が利かないのかと苛立ったことも度々あった。

 副検事が扱う事件は、主に交通事故や傷害などの比較的軽微な事件だが、市井の人が刑事裁判に接するのは、大半がこうした事件だ。報道されたり、判例集に出るような事件ではなくとも、細かい事件だから副検事に任せてよいというのは、どうもしっくり来ない。

 もともと、副検事も特任検事も、出発点は正検事の不足であったのだろう。だとすれば、司法試験の合格者が増え、検察志望者が逆肩叩きにあっているという現在、副検事を正検事に置き換えていくことを真剣に検討するべきなのではないか。同じことは、簡裁判事についても言えるだろう。そこまでして初めて、司法改革の名に値する改革がスタートするというべきではないだろうか。



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