司法ウオッチ<開かれた司法と市民のための言論サイト>

 

 テレビ番組のネタとしては、取材にさほどお金もかからず、とっつきやすいのか、新人弁護士がお金がなくて困っている様を取り上げた番組が増えているような気がする。見ていて切なくなるものばかりだが、皆必死でがんばっている様子を見ると、つい、いつも録画までして見入ってしまう。

 

  私自身、無罪をとった事件がマスコミに取り上げられた際には、随分テレビにも出させてもらった。もともと、学生時代はマスコミ志望だったので、記者会見で多くの報道陣を前にした時は随分と気分が高揚したが、次第に慣れてくると、マスコミとの関わりは実に難しいものだと痛感させられた。

 

 多くの人が勘違いしているようだが、弁護士が、弁護士として報道番組に出たり、記者会見を開いても、基本的に無給だ。生放送に出て解説をしたりすると、結構なギャラを出してくれ、帰りのタクシー代までもらったこともあったが、ちょっとしたコメントぐらいだと、せいぜいボールペンみたいなお土産をもらう程度だった。もちろん、こちらも、取り上げてもらえれば助かるので、お互いに全く問題ないのだが、テレビに出て食って行こうとする人は大変だろうなあと常々思っていた。もっとも、ワイドショーなどの出演者は、プロダクションと契約して、文化人枠ではなく、芸能人枠でギャラをもらうようなので、かなりの収入になるようだが。

 

 弁護士がテレビに出ると、宣伝になって、依頼者が殺到するのではないかと思っている人もいるかもしれないが、これも全く事実に反する。確かに、テレビを見たといって電話をかけてくる人はたまにいるが、実際に仕事に結びつくことはほとんどない。むしろ多いのが、政治やマスコミについて一方的に電話口で独自の見解を話しまくっていく人たちで、その対応には実に消耗させられた。

 

 他方で、弁護士であるというだけで、一応は、マスコミも話を聞いてくれるのは、やはり、ありがたいことだ。これは、弁護士の特権であるとともに、社会から付託された責任の一つだ。社会的発言力を持っている以上、適当なことを言い放って済ましていることは許されない。マスコミとの関わりには色々な形があるだろうが、弁護士としての仕事を確立した上で、目的意識を持って、うまく使わせてもらうというのが一番座りが良いのだろうと思う。



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