司法ウオッチ<開かれた司法と市民のための言論サイト>

 私は司法試験合格者500人時代の最後の世代に属する。修習生にとっては完璧な売り手市場だったから、当時、少なくとも一般民事の弁護士になろうという人は、就職について、特に不安は持っていなかったのではないかと思う。

 私自身は実務修習の早い段階から任官を決めていたので、就職活動というものはほとんどしていない。それでも前期修習や実務修習の初期には、仲間に誘われて、いくつか事務所訪問に行くことはあった。

 もっとも、これは就職を意識した準備というより、もっぱら、先輩弁護士にご馳走になりに行こうという程度の実に厚かましいもので、全く切迫感がなかった。昨日の事務所訪問はしゃぶしゃぶだったとか、銀座のクラブに連れて行ってもらったとかいう自慢話がまことしやかに飛び交っていて、そういう環境に、疑問を呈するような人も、あまりいなかったように思う。

 今、そういう話をすると、石でも飛んできかねない。弁護士の就職環境は、予想されたことだが、間違いなく、確実に、加速度的に、悪化している。

 横浜弁護士会では、例年秋に、弁護士と修習生のマッチングのため、就職説明会を開催している。弁護士会館のほぼ全スペースを使い、参加した法律事務所がブースを作って待ち構え、そこに、面接を希望する修習生がぐるぐる回ってくるというスタイルだ。

 私の事務所も、数年前にこの就職説明会に参加したのだが、市場の主従が入れ替わり、完全な買い手市場になったことをいやでも実感せざるを得ない体験だった。

 弁護士側には、予め、修習生のプロフィールや就職に際しての希望事項が配られる。驚いたのは、希望する収入の欄に、年収200万から300万でいいので、弁護士会費だけは払ってほしい、というような記載をしている人が結構いたことだった。

 年収200万だと、事務員さんの給料よりもかなり安い。思わず、面接の際、「本当にそれでいいの?」と聞いてみたところ、給料がもらえるだけで十分だという回答が大半だった。大変なことが進んでいると思わざるを得なかった。

 国内最難関の資格といわれた弁護士が、いまや、法廷にも行ける事務員とでもいうように、安月給で刈り取られようとしている。こうした動きは、近い将来、我々から、職業に対する誇りを根底から奪い去ることになるのではないか。実に、暗澹たる気分になった。

 朝から絶え間なく続いた面接をようやく切り抜け、説明会が終了すると、その日の夜から、昼間面接をした修習生からのメールが殺到し、結局、その後2、3週間は、こうした修習生の再面接に忙殺されることになった。約30人は個別に面接をしたと思う。

 昔の就職活動なら、何度か面接を繰り返し、馬が合うかどうかをお互いにじっくり見定める、というやり方で対応できたのだろうが、人数が増えるとそうもいかない。

 私の事務所では、成績表を持参してもらう一方で、予め課題を伝えて、論文を書いてきてもらい、書面審査をしたうえで、面接に臨んだ。自分が修習生のときにこれをやられていたら、絶対どこにも就職なぞできなかっただろうなと、何とも複雑な思いで論文を読んでいた記憶がある。

 結局、極めて優秀な勤務弁護士を1名採用したが、私のもとで働きたいと申し出てくれた人を30人も切ってしまったことになる。いつのまにか、ここまでしないと、地方の小規模な一般民事事務所にも就職することができない時代になっていたというのが、本当に驚きだった。

 しかし、横浜弁護士会の就職説明会も、ここ2、3年は、開催が危ぶまれる状態が繰り返されている。採用を表明する事務所が減っているのに、横浜での就職を希望する修習生が激増し、説明会のシステムが成り立たなくなりつつあるのだ。

 今のところ、理事者が電話かけをしたりして、なんとか採用事務所を確保して開催にこぎ着けているが、これもいつまで続くか、不安が拭えない。



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