司法ウオッチ<開かれた司法と市民のための言論サイト>

 

 朝日新聞の誤報騒動が収まらない。慰安婦報道、福島第1原発の吉田調書報道に続き、任天堂社長の偽装インタビューなど、天下の大新聞とも思えぬお粗末な事件が次々明るみに出てきて、まるで釜の底が抜けたような事態になっている。

 
 私は、法曹を目指す前、学部生のときは一貫してマスコミ志望で、当然朝日も受験し、あっさり落とされたクチであって、朝日には、今だに往時と同様、憧れに似た思いを抱き続けている。実際、この仕事をしていると、マスコミ関係者と話をすることが多いが、若手記者の中で、朝日の記者の優秀さは、やはり、頭一つ抜きん出ていると思わざるを得ない。その朝日が、下手をすると存続の危機に直面しているのだ。ことの大きさに、愕然とさせられる。

 
 他方で、新聞なんて、こんなものだという思いも強い。そもそも、私は、客観報道など、あり得ないことだと思っている。人の営みの一つである以上、全く主観を離れた客観的な報道など、あるはずがない。書く記者とその属する企業の主観と離れて、報道や言論は成り立たない。そんな報道機関が繰り広げるキャンペーンという奴は、要は意図した大掛かりな主観報道なのだ。その言い分を頭から信じ込むことは危険なことだということを、我々は常に頭に置いておく必要がある。

 
 今も法曹界が苦しみ続けている司法改革も、特に、朝日新聞の繰り広げた司法改革キャンペーンが大きな原動力の一つとなっていたことは明らかだ。朝日だけではないが、この問題で、マスコミは、社会には法曹への大きな需要があり、法曹数は絶対的に足りておらず、中でも弁護士は、社会の需要に応えていないということを盛んに喧伝していた。今となっては明らかだが、このキャンペーンには、事実の裏付けはなかった。要するに、誤報が社会を変えてしまったわけで、その影響は計り知れない。

 
 慰安婦問題や吉田調書問題は、朝日に対立するマスコミがあり、今後、多少なりとも流れが変わって行くのだろう。しかし、マスコミの全てがスクラムを組んできた司法改革の問題は、マスコミの自己批判は望むべくもない。マスコミは意図的に主観報道を繰り広げ、そこで間違いを犯すこともある。そのことをよく理解して、戦って行く以外にあるまい。



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