司法ウオッチ<開かれた司法と市民のための言論サイト>

 

 この4月、子どもが国立大学の法学部に合格した。どう見ても、合格レベルに達しておらず、浪人を覚悟していたのだが、法学部離れのどさくさ紛れに、後期日程で滑り込んでしまったのだ(実際、法学部人気の凋落は著しく、前年、前々年に比べ、倍率は各校とも軒並み激減していた)。我が子ながら、悪運が強いというか、往生際が悪いというか、呆れるばかりだ。そんな運任せの人生は長くは続かないぞと、発破はかけるものの、どこまで心に響いていることやら、心配の種は尽きない。

 

 国立に入ってくれて、親としては、かなりホッとしたのだが、どうも倅の方は未だに精神がハイになっているのか、司法試験を受けようかと思っているなどと言い出す。流石に怒るわけにもいかず、いろいろ調べて見たのだが、改めて、この業界は、金持ちクラブへと変貌しつつあるという思いを強くした。

 

 大学の生協に行ってみて、まず目についたのが、司法試験や公務員、司法書士など、試験対策の予備校パンフレットだ。予備校に行くこと自体、私は、悪いこととは思っていない。私自身は、予備校は答案練習と苦手科目の講義を利用したくらいだったが、予備校の授業、解説は刺激的だったし、レベルも高かった。今でも、比較的短期間に司法試験に受かったのは予備校のおかげだろうと思っている。おそらく、大学の授業を何年受けても、司法試験に受かることは不可能だっただろう。

 

 とはいえ、予備校はやっぱり高い。せっかく国立に受かっても、学費をはるかに超える予備校費が待っているのだ。しかも、昔なら、司法試験向けの講座をとっていれば済んでいたものが、今は、司法試験用のコースだけでなく、予備試験用のコースやロースクールに受かるためのコースなど、バリエーションが増えている。どうせなら、予備試験に受かって欲しい、ロースクール浪人はして欲しくないという親心がしっかり把握されていて、予備校のパンフレットをみているうちに、すっかり疲れ果ててしまった。

 

 こうした予備校費を、学生自身が、奨学金やアルバイトで賄うことはまず無理だ。畢竟、親の経済力に頼るしかないはずだが、学費や仕送りと別に、年間数十万、おそらく、もう一桁上の金額を毎年調達できる親がどれだけいるのか。

 

 少なくとも、形式的な機会の平等は保たれていた旧司法試験と比べると、いまや、金持ちの中でも、大金持ちでなければ仲間入りができない世界になってしまった法曹養成制度は、考えうる最悪の結末を辿りつつあるのではないのか。予備校以外の誰も得をしないこんな制度をいつまで続けるのか。ロースクールを推進した方々にぜひ聞いてみたいものだ。



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