5月15日から司法試験が始まった。今年の受験者は7600人あまり。史上最低の受験者数だそうだ。昨年と比べ、ほぼ1割の減少である。法科大学院に至っては、実に9割の学校が定員割れとなり、入学者も2700人と、こちらも史上最低を更新した。予備試験の方は受験者数が増え続けているので一概には言えないのかもしれないが、それにしても、全体として、若者が法曹界を敬遠しつつある傾向は明らかであろう。
何で、こんなことになってしまったのか。悔やむべきターニングポイントはいくつもあるのだろうが、そんなことを言っていても、状況がよくなることはない。この先、法曹界の魅力を取り戻すために、何ができるのだろうか。
考えてみると、今の状況は、20年ほど前、検事任官者数が最低だったころの検察が陥っていた環境に似ているのかもしれない。当時、検察は、「検事―その魅力」(うろ覚えなので、恐らく正確ではない)というような、今思うと少し気恥ずかしくなるようなタイトルの豪華なパンフレットまで作り、必死で任官者の勧誘に努めていた。
修習指導検事や検察教官のリクルートというか、接待も相当なものだった。それでも、例年、任官者は40~50人レベルで、検察教官の懊悩は深かったはずだ。しかも、少なからぬ人数が辞めていく。
検事の仕事に魅力があることは多くの修習生が分かっていた。私も、修習生のとき、先輩検事が、「時間が大事なら裁判官、金が大事なら弁護士、やりがいのある仕事が大事なら検事になれ」と言っていたことがあって、今でも、なるほど、そのとおりだったな、と思うことがある(「金が大事なら・・・」の部分は、だいぶメッキが剥がれてしまったが。)。
それでも、検事任官が少なかったということは、身も蓋もないことだが、それだけ弁護士の方が収入があったからなのだろう。検事の初任給は当時約420万円。渉外事務所の初任給が1000万と言われていたから、差は歴然だ。仕事に魅力があるとか、やりがいがあるというだけでは、構造的な格差をいかんともし難い問題なのだ。
検察の危機を劇的に救ったのは、合格者増ももちろん要因の1つだろう。しかし、なにより大きな要因は、弁護士の相対的な苦境にあるというべきだろう。結局は、経済の問題に行き着くのだ。
不況下の公務員人気は、法曹界に固有のものではない。近時の景気の向上が、弁護士の相対的地位を多少なりとも盛り返す契機となればいいのだが、構造的な人余りが状態となっている現状では、多少株価が上がったくらいでは、どうにもなるまい。
弁護士は、昔から、食わねど高楊枝で、あまり懐のことを話したがらないが、このまま行けば、弁護士の危機が法曹の危機に繋がっていくことは明らかだろう。そのつけは、国民自身が払うことになる。そろそろ弁護士も、やせ我慢を止めて、職業的魅力は経済と不可分であることを声高に訴えていくべきなのではないだろうか。