横浜弁護士会は、いまや会員数1200人を数える大規模単位会だが、奇跡的なことに、派閥というものがない(「野球部閥」とか「サッカー部閥」と言われる人脈は、あるにはあるが、東京三会等の派閥とは別物で、実に牧歌的だ)。
派閥がなくても、私などは、よけいな面倒が省けて、かえってありがたいなと思うのだが、困るのは、人事の面だ。特に、ここ数年、副会長のなり手がなく、冷や冷やさせられることが多い。
派閥のある会では、派閥が母胎となって、スムースに副会長のなり手が供給されているようだが、横浜では、そうはいかない。これまでは、同期のつながりで、何とか人材を確保してきたが、会員増もあって、会務の絶対量が急激に増加し、副会長にはなりたくないという人が増えているのだ。現に、来年度の副会長も、未だに5人定員のところが、3人しか決まっていない。
実際、私自身、平成20年に副会長職を経験したが、実に大変な1年だった。どうしても、仕事に割ける時間がある程度削られてしまうことになるから、イソ弁がいないと、死活問題になりかねない。
昔の副会長職は、やり遂げるとそれなりに箔が付くといわれていたようだし、私が仕えたT元会長が10数年前に副会長をやったときは、任期終了後、副会長がみな別荘を買っていたというから、豪勢な話だが、今や、これは夢のまた夢だ。ここ数年は、むしろ、「懲役1年・罰金○○百万円」と揶揄されるのが実態だ。
もちろん、背景には、弁護士業の余裕が失われていることが、厳然としてある。登録20年前後の中堅でさえ、1年間を弁護士会のために費やすことが難しくなりつつある。そんな時間があるなら、1件でも多く、事件を受けていかないとやっていけないというのが、多くの弁護士の本音になっているのだ。
こうした状況を受けて、横浜では、いま、副会長に給料を払うことを検討しているらしい。それも、1000万円近いものが考えられているようだ。そういうことで就任しようという副会長というのも、どうかとは思うが、そうでもしないと、もはや副会長を集めることが出来ないということなのだろう。
これも、広い意味で、弁護士の質の低下に連なる問題なのかも知れない。