司法ウオッチ<開かれた司法と市民のための言論サイト>

 
 いまは、全国で、ほとんどの弁護士会が市民向けの法律相談センターを開設していると思うが、私の地元だった横須賀支部に法律相談センターの相談所ができたのは、ほんの十数年前のことだった。

 それ以前は、横須賀支部管内に住む約60万人の人々は、口コミを頼りに弁護士を自分で探すか、1時間近くかけて横浜本部の法律相談に行くしか、弁護士を探す選択肢がなかったわけだ。

 行政の無料法律相談はあったが、管内の自治体すべてが対応していたわけではなく、直受けもできなかった。当時は、弁護士の広告は完全に禁止されていたから、市民から見た弁護士へのアクセスは、本当に、お話にならないレベルのものだったろう。

 案の定、横須賀相談所オープン後の賑わいは大変なもので、今でも、そのころの様子はよく覚えている。とにかく、2ヶ月先、3ヶ月先まで、予約が入らないという状況で、キャンセル待ちでようやく相談できたという人もいた。そんな具合だったから、受任に至らず、相談だけで終わってしまうようなケースでも、随分と感謝されることが多かった。

 需要はあったにもかかわらず、支部の法律相談所の開設が遅れたのには、様々な事情があったと思うが、弁護士会の内部に、弁護士会が法律相談を主催すること自体に対する根強い反対意見があったことは、大きな要因の一つだった。反対意見の論拠は、営業活動は、個々の弁護士が自分でやるべきもので、弁護士会が介入すべきではない、要するに、弁護士会は小さな政府に徹するべきだ、というものだった。

 確かに、理屈ではあるが、登録したてで、地縁もない新人弁護士にとって、法律相談センターは、貴重な事件の供給源であった。私など、接待や営業活動などしたことがないので、法律相談センター経由の事件が、その年の収入の3分の2以上を占めていた年もあったほどだ。若手弁護士の生命線だったと言ってもいいだろう。

 その法律相談制度が、いま、揺らいでいる。

 このところ、法律相談の担当日になっていても、4コマあるうちの相談が1、2件しかないとか、ひどいときは、予約が1件も入らないので、事務所で待機するしかないといったケースに出くわすようになった。3年前に副会長になる際、法律相談の予定を一旦すべてキャンセルしてしまったのだが、それ以前には、さすがにこのようなケースはなかったので、ごく最近の傾向だろう。

 弁護士会も、必死でその原因を探ろうとしている。相談の多くが、法テラスや司法書士会の相談に流れているのではないか、という意見が多いが、法律相談の絶対数が減っているという見解もある。

 本当のところは分からないが、このような現状から、弁護士会の法律相談は、既にその使命を終えたという意見も聞かれるようになった。実際、多くの弁護士がホームページを開設したり、何らかの営業努力をするようになった。広告が禁止されていたころのように、弁護士会が会員弁護士の営業を肩代わりするような法律相談制度は、もはやその役割を終えたのだという意見にも、一理ある。

 この先、弁護士会の法律相談が廃止される日が、遠からず来るのかもしれない。しかし、ゼロから出発して、市民の需要を掘り起こした横須賀相談所の賑わいを目にしたことのある者としては、やはり、寂しさは拭えない。

 理屈ではなく、どうも、この業界の凋落を象徴するもののように思えてならないのだ。



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