司法ウオッチ<開かれた司法と市民のための言論サイト>

 

 このところ、弁護士に連絡をしようと相手の事務所に電話をかけると、少し時間があってから、事務員ではなく弁護士が直接電話に出てくるということがよくある。事務員を雇わず、弁護士が1人で事務所を回しているのだろう。

 

 大変だろうなと思いつつ、人件費を切り詰めたいという気持ちはよく分かる。とても他人事とは思えない。最近は、事務所の賃料を節約して、レンタルオフィスを利用する弁護士もいるようだ。私も、今は弁護士が数名集まって経営しているから、何とか家賃も給料も支払えているが、1人だったら、とても、毎月数十万円に上る固定経費を支払っていける自信はない。改めて、零細個人事業主は厳しいものだと思う。

 

 一体、弁護士がなんとか食べて行くために、ギリギリまで切り詰めて、最低いくらくらいの経費がかかるのだろうか。

 

 レンタルオフィスを借りるとしても、電話代行は必要だろうし、面談用の会議室も確保しなければならないだろうから、どうしても、家賃関係費として、10万はかかるのだろう。電話代、携帯代が3万くらいか。弁護士会費が4万。最低でも、ランニングコストとして、20万くらいはかかりそうだ。

 

 他方で、弁護士も生きていかなければならないから、なんとか、月20万くらいは、収入を確保したい。そうすると、年間500万円くらいは売上がないと、生きて行くのも難しいということになりそうだ。国選なら、月に4、5件というところか。そう考えると、何とかなりそうな気もしてくるが、それは、国選事件をえり好みすることが許された恵まれた時代の呑気な錯覚なのだろうか。

 

 医者や歯医者と比べれば、弁護士は設備投資がほとんど不要だから、まだマシなのだろうが、若者が社会に出た途端に、毎年500万円を自分で稼いで来いと言われるのは、確かに不安だろう。何とかなるかもしれないが、イソ弁の経験もない新人弁護士には、何とかなるのかどうかも分からない。

 

 不安に駆られれば、プロボノどころではないだろうし、うまい話を持ち込まれれば、多少危ない橋だと思っていても、飛びついてしまう人もいるだろう。弁護士の「最低賃金」には、ある程度の余裕を見込みたいものだ。



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