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 平成20年に横浜弁護士会の副会長を勤めたとき、一旦、国選弁護人名簿から名前を外してもらった。会務で自分の仕事ができなくなることが目に見えていたので、とにかく、副会長の1年は、国選と当番弁護を勘弁してもらったのだ。

 任期終了後も、弁護士会から催促が来ないのをいいことに、再登録をサボっていたのだが、先日、司法修習生の指導担当になったことから、久々に国選事件を受任した。

 刑事裁判は、ここ数年で大きく様変わりしたが、なかでも国選の制度は実に大胆に変化していて、なかなかついて行くのが大変だった。

 私が弁護士登録をした十数年前は、もちろん、被疑者国選制度など存在せず、起訴前弁護といえば、当番弁護があったくらいだ。私がいた横須賀支部では、(被告人)国選は、裁判所の書記官が、弁護士1人1人に電話して、「お忙しいとは思いますが、何とか受けてもらえませんか」と頼んで受任してもらうという仕組みになっていた。

 当時、横須賀支部管轄の登録弁護士は20名ほどで、実働は十数名だったから、だいたい、1ヶ月に1件くらい、国選が回ってくるという印象だった。書記官はみな顔見知りだから、頼まれれば、基本的に快く受任していたが、国選は、仕事というよりも、プロボノの一つという感覚だったので、やはり、特に忙しい時期だったり、否認事件を抱えたりしていると、「今回は勘弁して。」と言って、受任をお断りする場合もあった。今の若手には、考えられないことかもしれない。

 さすがに、本庁管轄下では、もう少しシステマティックに選任がされていて、まず、国選事件のリストが弁護士会に回ってきて、国選を受任したい弁護士が、自分でこのリストを見に行き、受けたい事件をもらっていく、という形になっていた。

 私は見たことがないが、当時は、国選事件の配点日になると、朝、弁護士会の前で開業時間を待っている弁護士が何人か列をなしていて、この人たちが、真っ先に、覚せい剤取締法違反のような比較的簡単な事件をもらっていく、というのが恒例になっていたらしい(覚せい剤事件は、被害者がいないので、示談の交渉などをしなくていい。否認事件でない限り、手間のかからない事件の一つだ)。

 年間に数十件、中には100件以上も、こういう形で国選を受ける弁護士もいて、問題になっていた。当時、こうした弁護士は、高齢の方が多く、しばしば手抜き弁護が取りざたされていたのだ(実際、公判まで一度も接見をしなかったとか、記録も見ていないといったケースがあって、裁判所からも、事実上、苦情が寄せられることもあったようだ。若い弁護士は、「国選爺さん」と言って、白い目で見ていたものだった)。

 その後、受任できる事件数が制限されていくことになって、この問題は一応解決に向かうのだが、弁護士の数が増えてくるまでは、そんな制限を導入することは事実上不可能だった。

 何度も言うようだが、かつては、ごく普通の弁護士にとって、国選は、社会的義務の一つとしてやるべきもので、ビジネスではないという感覚だったから、最低限の義務だけは果たすものの、できれば、受けたくはないという人が多かった。 プロボノとして、年に数件受ければ、十分社会的責務を果たした、という感覚だったのだ。

 いきおい、弁護士会としては、国選事件の受け手を確保するのが至難となり、国選爺さんを内心苦々しく思ってはいても、頼りにせざるを得ないという面もあったのである。



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