司法ウオッチ<開かれた司法と市民のための言論サイト>

 

 

 司法試験法の改正により、司法試験の受験制限が事実上撤廃されたという報道が目を引いた。

 

 実際には、これまで、5年で3回とされていたものが、5年で5回まで受験できるものとされ、予備試験やロースクールをやり直せば、改めて5回の受験ができるようになるので、事実上の撤廃だということになるらしいのだが、今の法曹界を見て、ロースクールに行き直してまで6回目の司法試験に挑戦しようという人が出てくるのか、疑問だ。

 
 私自身は、一旦就職した後で受験を始めたので、スタートが遅い分、3回以内に受からなかったらさっさと諦めようと思っていたから、何回受験してでも司法試験に受かりたいという人の思いは、余りよく分からない。幸い、2回目の受験で合格できたが、その時点で25歳だったので、再就職を考えるにはぎりぎりのところだったのだろう。とても、10年かけて司法試験を目指すなどというギャンブルが許される状況ではなかった。

 
 実際に司法研修所で合格者と席を並べてみると、5年も10年も受験して合格したという人にはほとんど出会わなかった。2~3回の受験で合格したという人が大半で、クラスに数名、仕事をしながら受験して、10回目に合格したという人がいるくらいという印象だった。司法試験改革の必要性として、長期受験者の存在が殊更に強調されたが、実際はそんなものだったのだ。

 
 今回の司法試験法改正は、実際には幻に近いものだった長期受験者を逆に作り出していくものではないだろうか。昔と違って、今の受験者は、多額の学費を背負って受験に望んでおり、より、後に引けない状況になっている。その上に、5回受験のリセットのために、もう1回ロースクールに通ってくださいというのは、まるで司法試験蟻地獄だ。



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