業界団体として一番知名度があるのは、どこだろう。日弁連も、ニュースの俎上に上ることは多いが、一番政治力がありそうな、圧力団体としての知名度からいえば、日本医師会にはかなり見劣りするのではないか。確たる根拠があるわけではないけれども、日本医師会といえば、カリスマ的な指導者のもと、業界の利益を守るために日々政治家に対する圧力を加えているというイメージを持っている人も多いようだ。
実際には、社会福祉の関連予算は削られる一方だったし、診療報酬の状況を見ても、特に勤務医の生活状況を伝え聞く限りでは、とても、日本医師会が政治圧力を駆使して業界利益を擁護しているようには思えないのだが、一度出来上がったイメージというのはそうそう簡単に変わるものではないようだ。
弁護士業界についてみれば、弁護士出身の政治家は数多おり、圧力団体になろうと思えば、これほど強力な組織もないのではないかと思うのだが、今のところ、政治力を駆使してこの業界の既得権を守って行こうじゃないかというような話は聞かない。単に私がそうした動きに興味がないというだけのことかもしれないが、やはり、弁護士としては、政治力を持っていることは事実にしても、それを身内の利益擁護のために使うのは恥ずかしい、何より社会正義の実現が大事、ということなのだろう。
それはそれで尊敬されて然るべき態度だと思うのだが、さて、この先も、そうした、ある意味毅然とした政治態度を続けていくことができるのだろうか。司法書士や行政書士に職域を奪われつつあるのは、我々がやせ我慢をしている間に、彼らが政治力をつけてきているということの表れなのではないか。この先、食えない若手から、会費だけとってやせ我慢を強いる弁護士会に対して、強烈な反発が出てくることはないのか。
弁護士も生活をしていかなければならない以上、やせ我慢には限界がある。弁護士会が開き直ってやせ我慢をやめ、業界利益を優先し始めたらどうなるのか。あまり想像したくない事態だが、よく考えてみると、それって、訴訟社会アメリカそのものではないか。やはり、市民にとって、良いことはあまりないように思うのだが。