この夏休みを利用して、宮城、福島の被災地を回ってきた。今回は、震災の記憶が残っているうちに、子供たちに被災地を見せておこうと思い立ったものだが、旅行中、司法書士事務所に勤める方と話をする機会があった。
福島県内の、それも浜通りだけのことかもしれないが、被災地の弁護士も司法書士も多忙を極めている状態だそうだ。この人の勤める司法書士事務所は、毎日、日付が変わるころまで仕事に追われているらしい。ペイしない仕事も多いのだろうと思ったのだが、そうでもないらしく、この事務所は、裁判業務はやらない、昔ながらの、登記中心の事務所だそうだが、とにかく、土地の買い替え、交換に関わる登記が多くて、二進も三進もいかないということだった。
中でも、大昔の抵当権設定登記が残っていて、その抹消に頭を抱える事件が多いのだという。何とか供託で抹消できるものもあるようだが、厄介なのは、債権が「米何升」というようなものもあって、これは供託ができず、やはり相続人を割り出して訴訟をせざるを得ないため、弁護士の手間もひとかたではないということだった。手間に応じて、それなりの報酬はもらっているようだが、被災地の広大な空き地をみると、これは本当に大変な作業だと慨嘆するほかなかった。
私が関わっている原発事故の被害弁護団でも、9月から、いよいよ東京電力と国を相手取った訴訟を始める。
震災が、新たな法的需要を生み出しているということに、複雑な思いだ。おそらく、合格者500人の時代だったら、今のこの状況にはとても対応できなかったのかもしれない。