司法ウオッチ<開かれた司法と市民のための言論サイト>

 
 S弁護士が辞任後、私と兄は、新たな弁護士を探すための話し合いを始めた。当然のことながら、気がかりになるのが、途中から引き継ぎし、現状の民事裁判の流れを読みとり、さらに裁判の主旨を理解できる弁護士がいるかどうか、だった。

 

 もちろん、弁護士がプロであることも分かっているし、仮にこうした不安を投げかければ、「大丈夫」といわない弁護士などいないだろう、ということくらいは想像できた。だが、それでも、その新たな弁護士が、果たして、こちらの意図を把握し、それこそ親身になって闘ってくれるのかについて、大きな不安を抱えていたというのが、偽らざるところだった。果たして、そういう弁護士は現れてくれるのだろうか。やっとたどりついて弁護士に去られてしまった、普通の市民ならば、きっとだれもがそんな不安に陥るはずだ――。そんな風に思えた。

 
 私たちが抱えるような訴訟、とりわけ行政相手になる訴訟に得意な弁護士にたどり着くことを目標に、とにかく各自で情報を収集しながらする作業をすることで、兄との話し合いは一旦終わった。

 

 ところで、この話し合いで、兄が気になることを言い出した。

 

 「S弁護士は、我々が作成した資料のすべてに、目を通してないかもしれない」

 

 この訴訟で、こちらが作成した資料がS弁護士から送り返されてきたが、兄はそのすべてに目を通した。すると、私たちが重視していた肝心の資料が、目を通された形跡がないまま、ダンボールの中に眠っていたというのだ。肝心な資料とは、犯人の行動とお金の減り方の推移表と時系列を細かくまとめあげた、私たちの苦心の作であった。この裏付けされた資料の提出がなければ、陳述書の説得性が弱まり、信憑性が欠ける、そして私たちにとって厳しい戦いになる、というのが兄や私たちの見方だった。

 

 過ぎたことにせよ、S弁護士の見落としだったのか。それとも、必要なしというプロ判断なのか――。結論からいえば、この件に関しては、私たちの見方は外れていなかった。なぜなら、のちにこの資料の分析こそが、私たちの民事裁判で有力な鍵となったのだから。

 

 この点で、私たちはもっとS弁護士を問い詰め、彼の説明を求めるべきだったかもしれない。ただ、これもまた、裁判にも弁護士に慣れていない一般市民の現実であったようにも思う。今度の弁護士とは、きっちりした関係を作らなければならない。

 

 とにかく、次回の民事裁判まで時間がないため、まずは引き継ぎの弁護人探しに力を注ぐことになった。短期間であったが、手当たり次第に、兄と私それぞれが知り合いに聞き、情報を収集しながら手分けして弁護士を探す日々が続く中、あるところから候補となる弁護士リストが届いた。その中には、著名弁護士も含まれていた。しかし、リストはあっても、この裁判を受けてくれる「保証」は全くない。不安な日々が続いた。



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