司法ウオッチ<開かれた司法と市民のための言論サイト>

 東京に戻り、国選弁護人で交わし詳細について、家族に連絡を入れた。まず、九州の姉、次に東京の姉のうちに出向き連絡、そして、メールと電話にてニューヨークの兄に連絡。思いはそれぞれあったみたいだったが、みんなの反応は、予想以上に鈍かった。むしろ、「その話、本当に大丈夫?」と、一致した感じで、難色を示していた。

 それもそのはずだった。実は、容疑者の女性の逮捕から一カ月後くらいに、その国選弁護人から、姉の所に、一通の文書で連絡がきていた。内容は、犯人の両親が謝罪したい、そして、窃盗した額が100万円ぐらいなので、支払いたいというものだった。当時、姉からすると、まず、両親本人からのとりあえずの謝罪もなしに、いきなり弁護士からの文書で、しかも中身に、「金の話」があったことに戸惑った。

 容疑者が警察に勾留され、その最大延長も警察側も視野に入れていた時期に、その時点で、取り調べで本人が自供していた窃盗額は、「100万円くらい」と警察から聞いたことがあった。おそらく、そのことをもとに弁護士は話を進めようとしたのだろうと思った。

 刑事裁判前で、確定していない額を、自供のみで、「これくらい自白しているようだから、これで勘弁ね」という風に、こちらに話をもちかけてくる対応にも、家族は嫌な印象を持っていた。「100万円ぐらいってなんだよ。根拠もないのに。そんな額を提示されても納得もできないよ」が、家族間での結論だった。容疑者の両親と弁護士が、何を考えて物事の進行を進めているのかに不信感を強くしていた。

 その後、本当に悪かったという「謝罪の念」がこもっていれば、慰謝料として、「150万円」受け取るべきかどうか家族で何度も話し合った。みんなそれぞれ生活もあり住む場所も違う、この話を統一するのには至難の業だった。時間ばかりかかり、それぞれの思いや意見をまとめる作業にも苦労があった。

 だが、ようやく、家族で一つの結論を出した。それは、第一条件としては、「150万円」では、この事件を絶対に済ませないこと。家族での意思の統一は強い絆となった。

 しかし、私たちは、様々なことを思い出し、警戒していた。相手は、プロの弁護士であり、法のテクニックを屈して必ず何かしかけてくると。それを想定して、こちらも足元をみられないように慎重に準備を整えることに決めた。口頭での、やりとりは危険すぎると考えた私たちは、弁護士と交渉は、こちらはこちらとしての主張を明確に文書化したものを作成し、相手側弁護士に提出する形にすることにした。

 そして、「150万円」という額に関しては、あくまでも、「被害額の一部金、もしくは、純粋な慰謝料」としてならば、受け取る方針を家族間で固め、それを伝える文書を提出することを決めた。

 次に、私たちはこれをどのような方法で相手に渡すのが、相手に少しでもこちらの気持ちが、伝わるのかを考えた。そして第二回公判の時に、手渡しで渡すことがベストかもしれないとの結論に達した。相手の様子を見ようとそれが得策かもしれないと。



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