司法ウオッチ<開かれた司法と市民のための言論サイト>

 仕事の最中、出ることができず、鳴りやまなかった携帯の着信音の履歴を見ると、兄からだった。履歴の着信回数からして、S弁護士との話し合った結果報告だと、すぐ分かった。

 

 果たして、どのような展開になったのだろうか。どちらにせよ、どうころんでも、前へ歩まなければならない。そんな思いにかられながら、兄へ連絡を入れ、結論から単刀直入に聞いてみた。兄の語った結果は、S弁護士の復帰はなし、「あっさり断られた」というものだった。

 

 実は、兄がS弁護士と電話で話している最中、兄のもとに、宅配便で段ボール箱が、送られてきた。話を済ませた後、送り主をみると、それはたった今、話していたS弁護士からだった。中身を空け広げてみると、以前こちらが民事裁判用に作成していた資料一式が送り返されていた。彼の辞任の意思が固かったことが、その時になって改めて分かった、という話だった。

 

 S弁護士との話し合いで、兄はS弁護士復帰を希望する父親の意思を丁寧に告げ、「もう一度弁護人をお引き受けていただけませんか」と、お願いした。しかし、S弁護人はブレることなく、即答で「いいえ」と返してきた、という。

 

 次に重要な金銭に関することに関して、兄は切り出した。これまで彼に支払ったおカネは、どこまで返金されるのか――。兄がストレートに投げかけてみると、S弁護士は押し黙り、しばらく膠着状態に陥った。やはり、一度受け取ったおカネの返金は抵抗があるということか。

 

 ただ、われわれとしても、このままあっさり「辞任」を認めるという気には、到底なれない。これまでの支払ったおカネ、そして私たちの期待への裏切り、そして頼るべきものを今、失う不利益。どうしても、それは納得がいかなかった。

 

 遂に兄はこう彼に告げた。既に弟は弁護士会を通じ、紛議調停、懲戒請求の準備に入っている。回答次第では、手続きを進めるということだったが、本当に伝えたかったのは、こちらの真剣度だったといってもいい。正直、短時間で蹴りをつけるための、駆け引きを仕掛けたという面も否定はできなかった。この時、S弁護士に私たちの覚悟が、どのくらい伝わっていたかは分からない。ただ、S弁護士は、まるでわれわれ出方に応じるかのように、膠着状態を自ら破り、回答してきた。

 

 「受け取った着手金の半分は返金します。でも、私も色々と作業したので、あとの半分は、労力の対価としていただきます」

 

 すると、その後、すぐさま、たたみこめるように、こう強い口調で付け加えた。

 

 「もしこの条件で不満であれば、私も受けて立ちますよ」

 

 兄は、「わかりました」と、静かに対応し、懲戒請求、紛議調停に持ち込むどうかは、家族間で相談して決めるということだけ伝え、受話器を置いたという。

 

 短時間の会話の中から、S弁護士の本心を引き出したと思えた。この時点で、完全に彼の復帰はなくなった。残ったのは、弁護士辞任によって、先が見えなくなった父の裁判と、S弁護士との紛争だった。不安な気持ちの中で、私は今後の展開を懸命にイメージし始めようとしていた。



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