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 〈日本学術会議法の定め〉
 

 アメリカ大統領選挙も前副大統領のジョー・バイデン氏の当選が確実になり決着を見た。選挙期間中の両候補の支持者たちの熱狂ぶりには驚かされた。日本がもし大統領制を採用したら、国民の熱気はここまで盛り上がるだろうかと思う。ポピュリズムとか何とか言われるが、国民が政治にここまで関心を持つということには多少の羨ましさを覚える。

 誰が大統領になるか、政治の最高責任者の決定は、その国家・国民の運命を左右する。大統領だけではない。公共団体、企業とて、そのトップが誰になるかによって盛衰が分かれる。この世は適材・適所を要求する。

 今、我が国は、学術会議会員任命拒否問題に揺れている。これも公の職務に就く者の決定の問題であり、国家の運営にとっては極めて重要な関心事であることには間違いがない。

 日本学術会議法(以下「会議法」という。)7条2項は、その会員について、「第17条の規定による推薦に基づいて、内閣総理大臣が任命する。」と定め、その17条は「規則で定めるところにより、優れた研究又は業績がある科学者のうちから会員の候補者を選考し、内閣府令で定めるところにより、内閣総理大臣に推薦するものとする」と定める。その内閣府令というのは、任命期日の30日前までに候補者の氏名を知らせなさいというものである。


 〈会員任命拒否問題の本質〉
 

 菅総理は、今回、学術会議が推薦した候補者105名のうち6名を任命せず、その数の欠員を生じさせ、学術会議側、任命されなかった者、野党その他マスコミを含む各方面からの批判に晒されている。

 菅総理の言い分は、要するに会議法7条で内閣総理大臣が任命すると規定されており、その規定どおり行った迄である趣旨の言葉の繰り返しであり、任命しなかった理由は個々の人事に関わることとして説明を拒否している。

 学術会議が「独立して」その職務を行うことは、会議法3条に明記されている。問題は、このように独立機関である学術会議が会議法に基づいて適任と認めて申請した会員候補者について、任命権は内閣総理大臣の専権であり、任命拒否権は自由に行使できる、と言って突っぱねることは許されるかということである。つまり、任命権者が憲法や法律で明記されている場合に、その任命権者は、いつでも実質的に人事権を行使し、人事の相当性を審査し、任命権者の一存で任命したりしなかったりすることは許されるか、ということである。

 今回の学術会議会員任命拒否問題については、学問の自由、思想・表現の自由という基本的人権に関わる極めて重大な問題であることを十分に認識することが必要である。



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