司法ウオッチ<開かれた司法と市民のための言論サイト>



 〈勝ち負けだけでなく楽しい人生かを大切に〉

 一人一人の人間が、幸せな人生だったと思えるような社会を創るために役立つ方法には、いろいろな方法がありそうだが、地方弁護士としては、毎日接する一人一人の人のために、その人を楽しく生きられるように少しでも役立ちたい、という思いで接することが大事だと考えている。裁判に勝つか負けるかということだけに囚われずに、皆が楽しい人生になるかどうかを大切に考えたい。

 「人生は、いまの一瞬を、まわりの人といっしょに、楽しみ尽くすのみ」という「田舎弁護士の哲学」を実践し、相談者をはじめ、接する人皆が幸せになれるように役立ちたい。それが地方弁護士の役割だと確信している。

 田舎弁護士の哲学を説き広めるために、これまで発行した駄弁本は、「長生きを楽しむコツ(年寄りのための童話)」シリーズ1巻から16巻、「いなべんの哲学」シリーズ1巻から27巻となっている。これからも書ける間は書き続けたい。

 これは私個人の趣味の領域ではあるが、地方弁護士として老馬の智を地方住民に説き知らせることは、地方弁護士の使命の一つと考えることもできるのではないかという思いによるものである。

 もっとも、どの駄弁本も文字通り駄弁であり、不必要な注意を人に向けて口にしている老婆心そのもののようにも思えるが、老馬の智のようにも思えることもなくはない。どちらなのかと駄弁本を書きながら、いつも自問自答している。老馬の智として受け入れてもらえるか、老婆心として不必要だと思うかは読む人次第であり、読む人に任せ、自分の思うことを一方的に書き語るのが、私のやり方である。

 浅学非才の身でありながら、人間の生き方を語ることが、地方弁護士の社会的使命だなどと言うこと自体、正気の沙汰とは思えないという気もする。しかし地方弁護士は、他のどの仕事よりも多くの人の悩み事に接し、クライアントと一緒に泣き、笑い、人生の悩み事を解決する仕事をなしている。そこから生まれる知恵を、地方住民に説き知らせることは、地方弁護士の役割ではないか、と考えることもある。そんな思いで講演し、駄弁本を書いている。


 〈環境と心の整備に役立つ地方弁護士〉

 この連載は、「地方弁護士の社会的使命」というタイトルにしているが、それは私がそう思っているというだけのことで、他の弁護士もそうあるべきだなどと言うつもりはない。そういう考えの地方弁護士がいることを知ってほしいだけである。

 誰かに知ってもらいたいという気持ちはあるが、それ以上のことは、読者に期待するものはない。共鳴してほしいとか、いっしょに行動してほしいなどという高望みはしない。書きたいことを書ければ、それだけでよいという思いでやって来たし、これからもそういう思いでやっていきたい。

 地方弁護士の社会的使命は、人命と人権を擁護することにあるとして、人命と人権を根底から侵害する戦争の反対と憲法9条改定阻止のために地方弁護士として、それぞれがやれることをやらなければならない。それが地方弁護士の社会的使命であるとの思いは、弁護士を目指した当時から弁護士となって半世紀を超えた今日まで変わらない。

 地方弁護士となって歳を重ねてきて、その思いに加えて、地方住民が幸せな人生だと思えるように、地方住民のお役に立ちたいという思いが湧いてきて、その思いは年々大きくなってきている。幸せな人生かどうかは、生きていく周囲の環境と、生きていくその人の心が大きく影響する。その双方が整うことが不可欠である。環境と心の整備に役立つ地方弁護士になりたい。

 人命と人権を守りたいと思っても、戦争となったらそれができる環境は、完全に破壊されることになる。戦争は絶対にさせてはならないことは、明々白々である。だから地方弁護士としても、戦争をさせないために働くことは、何よりも大事な社会的使命である。最後にそのことを、もう一度確認したい。

 幸せな人生と言えるためには、その人が幸せと思える心が不可欠である。環境がよく、物質的に恵まれても、幸せと思えない人も多くいる。この心の問題を前向きにしてやることができれば、素晴らしいことであり、その手助けができれば、地方弁護士としての社会的使命を果たすことになりそうであり、これから先の生き甲斐となるものと確信している。

 そういう思いで、「地方弁護士の社会的使命」という連載で、「老馬の智で、道案内をしたい」ということを書き加えることにした。=この項終わり

 (拙著「地方弁護士の役割と在り方」『第2巻 地方弁護士の社会的使命――人命と人権を擁護する――』から一部抜粋)


 「地方弁護士の役割と在り方」『第1巻 地方弁護士の商売――必要悪から必要不可欠な存在へ――』『第2巻 地方弁護士の社会的使命――人命と人権を擁護する――』『第3巻 地方弁護士の心の持ち方――知恵と統合を』(いずれも本体1500円+税)、「福島原発事故と老人の死――損害賠償請求事件記録」(本体1000円+税)、都会の弁護士と田舎弁護士~破天荒弁護士といなべん」(本体2000円+税)、 「田舎弁護士の大衆法律学 新・憲法のこころ第30巻『戦争の放棄(その26) 安全保障問題」(本体500円+税)、「いなべんの哲学」第1~27巻(本体1000円+税、13巻のみ本体500円+税)も発売中!
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