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 〈辞退の自由を認めることで違憲疑義回避〉

 被告人の裁判員制度選択権についての学説としては、つぎのものが見られる。

 ○ 西野喜一教授は、「被告人に、裁判員が加わった裁判を辞退する自由があるのであれば事情は転換し、被告人の承諾の下で実施されるものとして、裁判員による裁判の合憲性は肯定できるであろう。・・・憲法を改正しないままでどうしても裁判員制度を導入したいというのであれば、憲法違反の疑義を避けるためにも、そして当の被告人自身が納得し得る制度にするためにも、被告人に裁判員による裁判を辞退する自由を是非とも認めるべきである。」と論じる(裁判員制度批判p100以下〈引用している文献記録参照〉)。

 ○ 椎橋隆幸教授は、「裁判員が加わった裁判がラフな事実認定と重い量刑の結果となる恐れがある場合に、現在既に被告人に保障されている裁判官による裁判(精密な事実認定と公平で統一した基準による量刑)を奪うことには大きな疑問がある。国民一般にとって、あるいは裁判制度にとって重要な意義を有するという理由は、被告人が現在有している裁判官のみによる裁判を受ける権利・利益を奪う正当な根拠としては十分とは思われない。・・・選択権を認めるべきであろう」(「裁判員制度が克服すべき問題点」「田宮裕博士追悼論集下巻」p119以下)と述べる(同教授は最高裁判所の裁判員制度の運用に関する有識者懇談会の座長を務めている)。

 〈「選択の自由は保障されていない」という立場〉

 ○ 土井真一教授は、そもそも刑事事件の場合には「公平な裁判所の迅速な公開裁判を受ける権利がある」と定められていても、厳密な意味での選択の自由を保障するものではない。刑事被告人が裁判を受けること自体は義務である。被告人の適切と考える構成の裁判所における裁判を受ける権利を保障するものではない。もし被告人に辞退を認めて裁判所の構成に関する憲法上の制約を回避することを容認するのであれば、理論上は、本人の同意さえあれば、刑事事件についても行政官のみによって構成される裁判所による非公開の裁判も認めざるを得なくなる。裁判所の構成は、公権力の行使に関わる国家機関の組織に関する問題であって、公権力行使の対象となる個人の主観的選好に委ねなければならない事項ではない。審議会意見書の意見も憲法上尊重さるべき、憲法政策あるいは立法政策上の見識である旨説く(岩波講座「憲法4」p270、一部要約)。

 ○ 安念潤司教授は、「裁判員制度が憲法上必要的でないことは明らかであるから、被告人の辞退権は当然立法政策上検討されなければならない。堂本照樹氏は「憲法32条が保障する「裁判を受ける権利」を「より良く」保障しうるのはどの制度かという観点から考察する必要がある」と指摘する。・・・しかし、・・・すべての人にとって「良い」制度などありそうにない以上、被告人に裁判員による裁判を辞退する自由を認めるべきと考える」と説く(「自由主義者の遺言(司法制度改革という名の反自由主義)」憲法論集-樋口陽一先生古稀祈念p381)。



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