小沢一郎裁判は、結局、2審も無罪となった。1審がやや灰色の、辛うじて無罪というニュアンスだったのに対し、2審は完全無罪という感じだったようだ。報道されている範囲で見る限り、妥当な判決というべきだろう。「強制起訴」された事件が軒並み無罪となっている現状に、政府も、流石に、改正検察審査会法の見直しを検討せざるを得ないようだ。
改正検察審査会法は、裁判員裁判の導入や被疑者国選の拡大と合わせ、平成21年度から施行された。私は、平成20年度の副会長で、刑事弁護センター運営委員会の担当だったので、改正検察審査会法の施行に向けた準備に少なからず関わってきた。
20年の秋頃まで、そんな改正がされたということ自体、私も他の理事者も全く意識しておらず、初めて日弁連から連絡を受けたときは、他の理事者とともに、「なんだこれは!」と驚愕したことを覚えている。刑弁センターを中心に会内でまず問題になったのは、補助弁護士や指定弁護士を誰がやるか、という問題で、刑弁センターなのか、犯罪被害者支援委員会なのか、ずいぶんもめたが、それよりも、強制起訴という起訴独占主義の強烈な例外について、理事者も関連委員会も、本当にそんなことができるのか、と、困惑するばかりだった。
正直なところ、この制度は、裁判員裁判導入のどさくさ紛れにできてしまったものではないかと思わざるを得ない。日弁連がこれをなんでスルーしてしまったのか、不思議でならない。今、無罪判決が積み重なると、改めて無茶な制度であることが浮き彫りになったが、当時は、弁護士も問題点を把握できていなかったとしか言いようがあるまい。
強制起訴が政治利用され、大変な人権侵害を生み出す危険性が高いものであることは、もはや明らかだ。そして、裁判に「民主主義」、「市民感覚」を反映させるという美辞の欺瞞も明らかになった。改正検察審査会法の見直しを機に、司法改革のヒステリックな熱狂が少しでも覚めてくれることを期待したい。