裁判所の調停員や自治体の行政委員など、弁護士会には、様々な外部団体の人事について、推薦の依頼が寄せられる。横浜弁護士会では、これらの外部人事案件は、人事委員会という委員会に持ち込まれ、審議がされることになる。
行政委員などは、以前は、いわゆる一本釣りで、依頼者サイドのコネ中心に探されることが多く、弁護士会は最初からスルーされることも多かったのだが、それでは不公平が生じるので、弁護士会としては、極力弁護士会の推薦を受けてもらうよう地道にお願いを続けてきた。現在は、大半の外部人事案件が、このルートに乗っている。
横浜弁護士会の人事委員会は、定員30人程度のごく小規模委員会だ。さすがに、この人数ですべての会員から適正な候補者を選出することはできない。ほとんどの案件では、まず、関係がありそうな委員会に候補者選出の打診をし、委員会から出てきた候補の可否を審議するのがルーティンとなっている。公害関係の人事なら、まず環境委員会にお伺いを立てる、という具合だ。
こうした人事は、えてして報酬も低額で、弁護士が少なかったときは、なかなか受け手がなく、推薦に苦労することが多かった。特に、女性弁護士の需要は高く、多くの女性弁護士が何件もの行政委員を掛け持ちして、下手をすると本業にまで影響が及ぶ有様だったのだ。
それが、ここ数年、だいぶ風向きが変わっている。まだ、具体的に、トラブルが生じたというわけではないのだが、人事委員会の中では、このまま、従前の手法で人事案件を割り振るのは問題なのではないか、という意見が出始めているのだ。
弁護士が増え、若手の弁護士の中には、低額とは言え、定期的な収入に魅力を感じるという人が出てきてもおかしくはない。そうだとすると、よほど公平にポストを分配していかないと、いずれ不満が出てくるのではないか。確かに、いずれ直面しなければならない問題だ。
そうした問題意識を受け、最近は、全会員向けにアンケートを行い、候補者の申し出を受けるという試みも行われているのだが、人事委員会が想定した以上の応募者が現れて、結局人選に苦しむことになるというケースもある。「ポストの奪い合い」とは思いたくないが、その兆しはあるようだ。